第3話 ガラスペン工房にて盗難!

<ガラスペン工房>

 目を開けると、どこかの店内にいた。寝ていたのかもしれない。


 カフェにいるようだが何が何だかわからない。目の前にはお世話になっている書店の担当さんが座って紅茶を飲んでいる。


「えっ、ここは?、奈央さんは?」

ブッコローは商店街ではない状況が分からず声を出した。


「珍しくグッスリ寝ていましたね。ここ、トンボですよ。奈央さんって誰?」

なるほど、カフェ トンボにいることはわかった。商店街からここに移動した記憶がない。私を抱えた奈央さんはどこに?いろいろ混乱していると


「そろそろガラスペン工房に行く時間だから出ましょう」

と担当さんが席をたって、身支度をしている。


「ちょ、ちょっと待って。この場所に来たときのことが思い出せなくて・・」

「工房についてから思い出したらいいんですよ。さっ、行きましょう。」

とかわされてガラスペン工房に向かった。もしかして夢だったのか?。それよりも、こっちが混乱して、あわあわしているのにマイペース過ぎるだろ。


ガラスペン工房に到着した。工房は店舗と一体になっており、一般のお客さんも多く出入りしている。並んでいるインクの種類に圧倒される。


「なにこれ?、すげー。」

ブッコローの声に店員さんが応対してくれる。


「この種類の多さが売りなので」

案内してもらいながら、それぞれの色の特徴、イメージなど教えてもらった。


「いや~、ほんとっ、勉強になります。色に込められた想いを聞くと、その色をこだわって使いたくなります。人に言いたくなります。このインク、ずっと見えるように持ってようかな」

ブッコローが青みがかった色のインクを持って真面目に話していると


「だめですよ、合コンに持っていったら。」

と担当さんに見透かされた。ふと見ると、お客さんの中に奈央さんを発見した。


「あー。奈央さん!」

ブッコローは声をかけた。しかし、彼女はそっけなく誰ですか?の雰囲気であった。

人違いかな?よく似ているのだが・・・、そもそも、どこであったのか。商店街の事は夢で、夢の中で見た女性と似ている人に声をかけているとしたら?


「しまった!、ヤバいやつになっちゃった!」

そんなことをつぶやいていると店内がざわざわして慌ただしくなった。


「ない! 高級ガラスペンがない!」


ショーウインドウに並んでいる箱入りのガラスペンのうち、1つが無くなっていた。

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