R.B.ブッコロー、乗り気ではないが取材に行く!≪ガラスペン盗難事件≫ ~R.B.ブッコローが知らない世界~
難波とまと
第1話 取材へ
<到着>
新幹線から降りた。12月になり、辺りの山は赤色が目立つ季節となっていた。外気にふれ一呼吸すると、新幹線の中とは異なる温度の空気が身体に入ってきた…
『さむい』
プラットホームは風が強く、そのことがさらに身体を固まらせ、もう一度新幹線の中に戻ろうかと思いながらブッコローは身体を丸くした。
『サッカーボールと間違われないかな…、いや、すでに元々丸かった、変わらないな』
そんなことを思いながらも足早にサッカーボール状態のまま移動した。
ブッコローはガラスペンの取材のため、新幹線に乗ってガラスペン工房のある街に来ている。
この街のガラスペン工房にはインクの色も数多くあるとのことで、普段は取材なんてものには興味を示さないのだが珍しく来てしまった。
どんどんガラスペンにハマりつつあるが、必死で否定する自分に楽しくなっていた。
ところで、今、困ったことが発生している。駅に着いたのはいいが同行予定の書店の担当者が何やら急用があるとのことで遅れると連絡があったからだ。
「はぁ、まったく。。。」
つい、ため息とともに言葉が漏れる。いや、いつもだいたいこんな感じか?
昨日、打合せをしたときには早めに着いて近くにある滝でサムネ用の撮影をしようと話をしていたのだが、省くこととなった。
正直ちょっと乗り気でなかったので良かった。濡れると困るフォルムをしているのを理解されていないと感じるときがある。
「ガラスペン工房に着いたときにビショビショに濡れてしまっていたら、どうするつもりなんだ? そもそも、こんな寒いのに”滝?”」
「ないないないない!」
独り言が止まらない。とりあえず合流するまでの時間が空いたため商店街に向かうことにした。
ちょっとやる気が出てきた。
ただ、最近不思議なことが身の回りに起き始めている。胸騒ぎが…気のせいだな
<商店街>
最近手に入れたビンテージメガネをかけ、お忍び気分を満喫することとした。
このメガネはフリーマーケットで手に入れたもので傷だらけでボロボロだったが、なんだか気になって購入したものだ。
いいメガネは磨くと綺麗になると聞いていたため、お世話になっている眼鏡屋さんに修理をお願いしたらピカピカにしてくれたのだがかなり高くついてしまった。
実はこの高くなった部分が特に気に入っている。
人と話すネタにもなっており、初めて話す場合には話題として役に立っている。このネタを用いて見知らぬ場所で“ラブコメ的な出会い”を期待している日々だ。
『そういえば、このメガネを使い始めたあたりからかな、不思議な感じがするのは…』
ふと頭をよぎりながらも出会いを求め、歩みを加速した。
「あー、ほんとっ滝でなくてよかった。」
つい本音が漏れた。そう思っていると時間が惜しくなり、タクシーに乗って商店街に移動した。意外と近く、歩いても(飛んでも)良かったと思う距離でもあった。
「近い?、気のせいだな。帰りもタクシーだな、タクシー」
貴重な出会いの時間を余すことなく確保したい。
「書店の担当者に呼ばれてから、タクシー拾って戻ろう。うん。呼ばれるまで満喫!」
そう心に決めた。いや、声にでていた。
商店街は異国の感じで食べ歩きしている人も多く、美味しそうな香りが漂っている。食べ歩きする人に沿って、ゆっくり移動する人の流れに沿って歩く。
1車線ほどの幅の道の両側に店舗が連なっており、店頭でいろんな食品が売られているので縁日のような気持ちになってしまう。
「この角煮まん、1つください」
つい、買ってしまった。
大きい角煮一切れをモチモチの生地で挟んだような形だ。大きい角煮がはみ出している部分が豪華な気がして買ってしまった。くちばしで角煮をつつく。
「美味しい!」
帰りにも買おうかな。問題点があるとすれば、歩きながらくちばしで食べるにはちょっと難しいことくらいかな。胸騒ぎは気のせいだな。
≪どん!≫
誰かにぶつかられた!
まさか、このことがガラスペン盗難に関わっているとは、このときは思いもしなかった…
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