歌ヶ崎小鳥は歌えない

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 歌ヶ崎小鳥は歌えない。


 小鳥のように綺麗な声を持っていても。歌えない。


 彼女は幼い頃から歌うのが好きだったが、ある時を境に歌えなくなった。


 それは、家族の死が原因だった。


 彼女の母親は、彼女の歌を愛し、常に褒めていた。


 だから小鳥は母親のために、毎日歌っていた。


 けれど母親が亡くなってから、歌う意味がなくなってしまった。


 歌に感情が宿らなくなって、それは歌とは呼べないものとなった。


 周囲は小鳥になんとか歌わせようとしたが、声を発してもそれは以前のような美しい歌にはならなかった。


 小鳥は歌うのを諦めて、そのまま生きるのだと思っていた。


 しかし、変わるかもしれない、一つのきっかけがあった。


 ある日、小鳥は一人の女性と出会った。


 その女性は、小さい頃に見た歌唱コンクールのことをずっと覚えていた。


 そこに出場していたとある女の子の歌が、凄く綺麗で忘れられないと。


 もう一度聞きたいと、その女性は言った。


 小鳥と女性は仲良くなって、友人となり、誕生日会を一緒に過ごすくらいの仲になった。


 小鳥は、仲良くなった友人のためなら、もう一度歌えるような気がした。


 だから、友人の誕生日が来るのを心待ちにしていた。


 しかし友人は、ちょっとした事故に巻き込まれて亡くなってしまった。


 小鳥は、ついにそれから先も、歌うことができなくなってしまった。


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歌ヶ崎小鳥は歌えない 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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