世界の理に嫌われた創世の魔法使いが、農奴のおばさんに転生したようです
休日レンキン31
プロローグ
僕は膨大な魔力を持って生まれた。
人族としてはありえないくらいの量だ。その気になったら一国を滅ぼすこともできるだろう。そのくらいの魔力量だ。
僕に残っている一番古い記憶には、僕の魔力の多さに驚く、両親の喜びに満ちた笑顔が残っている。しかし、年齢を重ねるごとに、僕の魔力はとどまることを知らず増大していった。両親はそんな僕を気味悪がった。まるで、化け物を見るかのように。
6つを数える頃には、いつ魔力が暴走して人に危害を加えてしまうか分からなくなり、僕の周りに人がいなくなった。
そして、僕は両親に捨てられた。遠い土地に連れて行かれ、正しく捨てられたんだ。
もう、そんな過去は思い出したくもない。そう思ううちに、両親の顔さえ思い出せなくなった。
捨てられてからも僕の生活は続いた。両親の唯一の優しさといえるものは、雨風をしのげる屋敷に置き去りにしてくれたことだ。でも、屋敷とは名ばかりで、まるで廃墟のような建物だ。もちろん、僕以外に誰も住んでいない。外には魔物が多かったけど、それは僕の魔法で蹴散らした。
屋敷には書物が多かった。魔法書や古文書の類が山のように所蔵されていた。
7つを数える頃には、いつ魔力が暴走して体が弾け飛ぶかわからなくなった。自分でも制御が難しくなっていった。でも、僕と魔物しかいないこの地であれば、魔力が暴走したとしても、誰の迷惑にもならないだろう。両親はいい場所を見つけたものだ。
そして、魔力が増大することと比例して、僕の肉体はどんどん弱くなっていった。
日差しの下での生活が出来なくなった。
曇り空で皮膚が火傷した。
そして、夜中でも皮膚がただれるような火傷をするようになった。
この体にとって、日の光の成分は最高破壊力の魔法なのだろう。
どうやら僕は、両親だけではなく、この世界にも嫌われたようだ。
僕は常に上位の再生魔法をかけ続けている。
そうしないとこの体が維持できない。その副作用として、味覚や嗅覚など五感も失われていった。お腹も空くことがなく、食事の必要さえない。
僕は、何のために生まれてきたのだろうか。
僕の肉体は限界を迎えようとしている。
つまり死だ。
魔力などいらない、平凡な人生がほしかった。
外を歩けるような、健康な体がほしかった。
ただ、それだけでいい。誰かに愛されたいとか、両親から愛情を注がれたいとか、そんな大層な望みはいらない。普通に生きてみたかった。
僕は暗闇の中、様々な魔法式を駆使して、魔力を抑える研究に没頭した。
積層魔法陣を用いた光魔法による演算術式を編み出し、魔力と各属性の分析をした。
その分析と同時に、屋敷にあった膨大な量の古文書や原始の書物を紐解いて、魔力を無くす方法を模索した。その過程で様々な古代魔法を覚え、数々の新たな魔法の創造も行った。
しかし、如何なる研究をしても、人の体から魔力を取り除くことはできなかった。
魔力は人の魂と深く結びついていたからだ。
僕は分析と研究のために、何度も何度も繰り返し、尽きることのない魔力を用いて、人族の一生を100回費やしたとしても遠く及ばない回数の、魔力の集中と収束を行った。その結果として、超高純度の魔力の錬成に成功し、それを扱えるようになった。
古い文献によると、太古の神々が大地の創造に用いた魔力と同種の純度のものだった。
その魔力は、ごく少量でも膨大なエネルギー量を持つ。
それほど純度の高い混じりけのない魔力は、詠唱という手段を必要とせず、想像によって魔法が創出できる。
しかし、僕にはどうでもいいことだった。膨大な魔力を持つ僕にとって、1万の魔力を使ってできたことが、1の魔力でできるようになったに過ぎない。僕の魔力量の上限は計り知れない。
僕は失意のどん底の中、魂の紐付きを解き明かす、転生魔法の研究を行うことにした。
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