第11話

 チーコはとにかく、かわいい。

 年齢は、10代。

 

 リーベと、俺で、チーコをかわいがった。

 

 ちなみに、どういう経緯かはわからないけど、チーコは自分の名前を嫌っている。 

 

「おいらの名前は、下ネタから考え出されたと、友達に言われたのですぞ」


「そんなことないのでござる。

きっと、両親も真剣に考えてくれたのでござるよ」


「名前かあ。

こればっかりは、自分じゃどうしようもできないからなあ」


 そう、俺もブオテジオーネという、異世界での名前が嫌いだった。

 名前どころか、自分のことすらも嫌いだった。


 だけど、今はこうして克服できている。

 

「チーコも、いつか自分に自信を持てるようになれる。

だって、勇者として選ばれたのだから」


 チーコも、名前が知れている有名な勇者・・・。

 まあ、リコルドほどではないけどな・・・。


 リコルドは、世界で一番有名な勇者嬢だけど、この世界での最強で、最低な悪役令嬢だってことを、世間は知らない。

 だって、あいつはいい子を演じることができるから・・・。


 それまでは、幸せな生活を送っていた。

 だけど、その幸せは、不幸な形で、裏切られることになる。


 そう、チーコとリコルドの婚約が決まり、二人は結婚することになった。

 まだ、年齢的には籍を入れられないために、事実婚という形で、一緒に暮らすことになった。


 勇者嬢を倒すことなんて、どうでもよくなっていた。

 俺は、勇者と関わっちゃいけないのかもしれない・・・。


 みんな、裏切るんだ・・・。


 リコルドは、俺の正体なんて気づいていないだろうけど、顔も見たくなかった。

 自分で、自分が惨めになった。


 過去のトラウマを乗り越えられていないことを、痛感した。


 そこで、僕はリーベからこの町を離れることを提案した。


「一緒に、逃げよう・・・・」


「使命は、どうするのでござるか?」


「使命なんて、どうでもいい。


元の世界に帰れなくても、いい。


誰のことも、失いたくないから。


リコルドの味方になってほしくないし、殺されたくないから・・・・」


 僕は、泣いていた。


 大の男でありながらも、泣いていた。


「僕は、わかっているのでござるよ。


君が人の何倍も、頑張っていることくらい・・・。


君は、何度転生しても、変わらないのでござるね。


だったら、僕ができることは、だだひとつ。


テュー君が壊れてしまわないように、支えてあげることぐらいなのでござる」


「ごめんな・・・。


こんな弱虫で。君を振り回すことになって・・・」


「いいのでござる。


いくらでも、僕を頼ってくれても、いいのでござるよ」

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