第5話
正直、情報が少なすぎるし、一日早く生まれようと、遅く生まれようと、行方不明捜しには関係ないと断言できる。
「王様、こんな情報だけではわかりません」
娘も娘なら、親も親なのか。
「うむ、少しだけ情報を付け加えておこう」
王様がメモを書いてくれたけれど、これは少しというレベルではなかった。
見てみると、こんな内容だった。
白い肌を持つ。
行方不明になった時期は、今から3日前。
身長は、四つごの中で一番高い。
時期女王としての素質を、四姉妹の中で一番に持っている。
ニーノとは、異母姉妹。
隣国の王子と婚約し、居候して以来、我が国にはいない。
「王様、お言葉なのですが・・・」
俺は、紙を握りしめながら、王様に怒りの炎をメラメラと向けた。
「なんじゃ?
まだ、情報が足りなかったのか?」
「行方不明って、言いましたよね?」
「それがどうしたんじゃ?」
「隣国の王子と居候して、この国にいないということが書いてありますが・・・・」
「そうじゃ。
我が国では行方不明扱いにはなっているが、隣の国にはおる」
「どこが行方不明だ!」
「ははははは・・・・」
王様が、苦笑いをする。
これで、よく王様になれたな・・・・。
「今までの苦労・・・・返してくれないか・・・?」
さすがに、俺はこればかりは許せそうになかった。
「いやあ、その方が盛り上がるかなーって・・・・」
「お父様、それではバンビーナお姉さまは・・・・?」
「試練を乗り越えることも、時としては必要だということを学ぶためにも・・・・。
このでっち上げが、欠かせなくて・・・・」
「でっち上げかあ・・・。
じゃあ、この試練は、必要ないんじゃない?」
「わはははは・・・・」
僕は、水を手から湧き出させ、痛くないしゃぼん玉をいくつか王様に噴射させた。
しゃぼん玉は、王様の顔の前で、いくつか弾けた。
「わ、すまん。
許してくれ」
「暴力で解決されなかったことくらい、ありがたく思いな。
ということで、今日から、俺は旅に出るから」
「二次試験は合格とする・・・・。
だから、許しておくれ」
こうして、王様からリコルドと俺で、勇者としての旅に出ることを許された。
「王様相手に、こんな技を放ってよかったのですか?」
「あんな話を大げさにする王様、王様でもなんでもない。
今日で、おさらばだ。
リコルド、今日からよろしくね」
「こちらこそ、今日からよろしくお願いしますなのです」
こうして、リコルドと俺での旅が始まった。
王様には洗いざらい白状させてもらったけど、ニーノが勇者としての予言を受けたというのも、王様のでっち上げで、左目に力を宿した、本物のちびっ子勇者はリコルド一人しかいないらしい。
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