◇16 パーティー

 今日は、レスリス公爵主催のパーティーに参加していた。そう、元婚約者、ストーカー女と俺を会わせた張本人である。本当にやってくれたなこの狸爺。そういう性格なのは知っていたけれど、そこまでやるとは思ってなかった。


 今度から絶対気を付けようと思ってしまった。



「だいぶ苦労していたようですな、ブルフォード公爵」


「どなたのせいでしょうか」


「はっはっはっ」


「一体どれだけ追いかけ回されたと思っているのですか?」



 まぁでも、ストーカー女は一応静かにはなった。今日だって屋敷で待ち伏せされてなかったし、途中から付いてくる事もなかった。ウチの馬者にはいつも苦労をかけていたから、本当に良かったよ。


 それに、侯爵も1週間前から表に出てこなくなった。という事は、お金が底をついたという事か。まぁそうさせたのは俺だが。意外と早かったな。もうちょっと粘ると思っていたのだが。



「最近始めた真珠事業、またまた良い結果を出しているそうじゃないか」


「きっかけをくださったレスリス公爵のお陰ですね」


「まさか、私の話を聞かずとももう決まっていた事だろう?」


「さぁ、どうでしょう」


「いやぁ、怖い怖い。さすが実力者だ」


「そんな事ないですよ」


「こんなに若い歳で、ここまでやってのけているんだ。大したものだよ」


「まだまだ経験のない未熟者です」


「君は相変わらず謙虚だな、まぁそれも君の良い所ではあるのだろうな」


「はは、お褒めいただき光栄です」



 真珠業も大成功。このままいけば今まで立ち上げてきたクロール生地、装飾品くらいの売り上げを出してくれる事だろう。


 どうしてこんなに簡単にポンポン事業を成功させていっているのかって? それは、全部金の力だ。この公爵家に入る金は一体どれぐらいだと思ってるんだ。


 それに今までダンテはほぼ使ってこなかったんだ。だから今まで溜まっていっていた金、そして他の事業も成功させていっているためそれで稼いだ金もあったからここまで成功出来ているという事だ。


 それとこいつのカリスマ性な。中にいる俺の力じゃない。俺だったら何も出来やしないわ。



「この前はありがとう、お陰でこのまま婚約までいけそうだよ」


「それは良かったです」



 そう、俺の所に来た縁談話の件、令嬢に紹介したそのうちの一人はこのレスリス公爵の子息だ。まぁ多少強引ではあったがうまくいったようで良かった。



「まぁ、ご令嬢は少しご不満そうだったがな。君も大変だな」


「私の屋敷を結婚相談所にしてもらいたくはないのですがね」


「はっはっはっ! だがまぁ、これで息子の方も安心だ。あの歳になって相手がいないのがずっと気がかりだったんだ、感謝しているよ」


「お役に立てて光栄です」



 利用された、とは言わないのか。まぁそっちも探していたみたいだし、たぶんストーカー女の件で少し反省してるのかもしれない。もうこれで観念してほしいんだがな。俺を厄介な事に巻き込まないでほしい。



「婚約式の際にはぜひ参加してくれ。と言っても、婚約者殿は泣いてしまいそうかな」


「さぁ、それは子息殿次第でしょうね」


「はっはっはっ、それもそうだな。経験者の君が言うんだからもっともな意見だ。だがねぇ、君も早く身を固めたほうがいいと私は思っているよ。もう25だろう?」


「えぇ、ですが……まぁ追々ですかね。変な噂もある事ですし、今はそれどころじゃないので」


「はっはっはっ!」



 おいおい、それ分かってて言っただろ。周りのご令嬢達、視線は向けないけど耳を澄ませてるぞ。


 結婚だなんて一生しなくてもいいと思ってるんだが、それだと公爵家の事もあるしな。どこかの俺の甥とかいないかな。兄弟とか。ほら、そういうのってマンガでよくあるだろ。


 今までだっていろいろとマンガでありそうな事ばかり起きてるんだからそれくらいあってもいいんじゃないのか?


 はぁ、どうしたものかな。まぁ後でゆっくり考えてみるか。後で誰かちょうどいい人が見つかるかもしれないし。いや、分からんが。



「そういえば、そろそろ第二皇子殿下の成人式だな。勿論、成人式パーティーには出席するだろう?」


「そのつもりですよ」



 それは、きっとあの事を言っているのだろう。以前あった皇太子殿下の成人式、パーティーの序盤でこいつは帰ったのだ。ストーカー女が煩かったから、というのが一番の理由か。面倒だった、が二番目かな。


 勿論、ちゃんと出席して最後までいますとも。俺はそのクズとは違うんでね。それに、皆が思う以上に面白いパーティーになると思うからな。



「君がそんな顔をするという事は、面白い事が起こる、と考えていいのかな?」


「さぁ、どうでしょう」


「はっはっはっ。まぁ、一応婚約者となっているルアニスト侯爵令嬢があの様子だからね。あれはやりすぎだと私も、周りの者達も思っているよ。果たしてどうなるか、楽しみにしているよ」


「ははっ」



 一応、ね。という事は、この方の中でストーカー女は婚約者として認めていないという事か。公爵位を持つこの方がそう思っているという事は、もしそのまま結婚まで進んだとしても簡単にはいかないという事。


 それに、まだ彼らは婚約式すら終えてない。というより、話も出ていない。


 だが、そこまでいけば、の話か。


 さて、どうなってくれるのか楽しみだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る