仕事をクビになった日にケルベロスを拾った。〜食費を稼ぐために配信者になったらバズりが止まりません〜

かなたろー

第1話 青年、会社をクビになる。

かぞえくん、あんた、明日から仕事来なくていいから」


 午後5時、ダンジョン整備の仕事をしている俺は、仕事あがりに現場監督の逆村さかむらさんに呼び止められた。


「そ、そんな、突然ですか?」

「本社から人員削減を求められてさー。お前、なんか残業ばっかだろ? ぶっちゃけ足手まといなんだよw」

「……はい、わかりました」


 俺は、いそいそと自分の荷物をかたずけると、あらためて逆村さかむらさんのもとにいくと、ペコリと頭を下げた。


「今まで御世話になりました」


 逆村さかむらさんは、にへらにへらと、薄ら笑いを浮かべながら対応をしてくる。


「悪いねーw なにせ本社からの要請なんでw で、これからどうすんだよw」

「田舎に帰って、実家の農家でもつごうかと」

「うはw いまどき農業ww」

「まあ、ほそぼそと頑張ります」


 俺が答えると、逆村さかむらさんはもごもごと俺に聞こえないくらいの声で、でもはっきりと「のたれ死ねばいいのに」とつぶやくと、はっと思い出した様に俺にむかって質問をしてきた。


「そうだ! せっかくだから、農業配信やればいいんじゃねーの? スローライフってやつww」


「はあ、考えておきます」

「ワンチャン、収益化できるかもしんねーしww」

「アドバイスありがとうございます」


 俺は、薄ら笑いを浮かべ続ける逆村さかむらさんにペコリと頭を下げると、職場を後にした。

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