第293話 ロダーレ



「シーマくん、僕たちは武器屋で杖を買ってこようか?」



ロダーレに着くなり、クリスさんが俺に言ってきた。

渡りに船だ。

ここは甘えておこう。



「クリスさん、すみませんがお願いできますか? 俺たちは冒険者ギルドに寄ってから教会に行きますので、その辺りで落ち合いましょう」


「わかった。シーマくん、あまり焦らないようにね」


「はい。気を付けます」



俺たちはサザンベールを出て2日後のお昼前にはロダーレに着いた。 遅くはないが早くもない。

よって、ロダーレも用事を済ませたらすぐに出て行かないとならないようだ。

エピリシアに来て、サザンベール以外は、ずっとこんな感じだな。

まずは冒険者ギルドで川か崖の情報収集だ。



「この辺初めてなんですけど、水浴びができるような川とかってあるんですか?」



冒険者ギルドに入った俺は、受付嬢にそれっぽいことを言って聞いてみた。

よくよく考えたら崖があるかって聞きづらいので、とりあえず川があるかないかでその後の展開を考えよう。



「あるにはあるんですが、ちょっと深いところもあるようなので水浴びするには少し危険かもしれませんよ?」



おっ、ちょうどいいじゃん!

場所についても聞いておこう。



「まぁ、それは大丈夫なんじゃないですかねー。時間的なこともあるので行けるかどうかは別として、場所だけ教えてくれませんか?」


「分かりました。場所はここからフィデールに向かって行って少し南側に逸れたところになりますね」


「フィデールのほうなんですか…。目的の方角とはちょっと違うようですね。教えていただきありがとうございました」


「いえいえ、また何かありましたら言って下さい」



俺たちは受付嬢に礼を言って冒険者ギルドを出た。



「シーマさんも上手いこと言うわね。進む方向が違うとか、良くそんな嘘がつけるわね」


「それって褒めてるの?笑」


「一応、褒めてるつもり笑」



フィリア王女もなかなかのもんだと思うけどなー。それでも比較対象の本人にそう言われたら、俺って性格悪そうに思われるじゃん。

まぁ、俺的には色んな意味でベストを尽くしてるつもりだから、それはそれで構わないんだけど…。


あとは、教会か…。




「これから教会に行くけど、クラリスはどうする?」



俺たちのほうに付いてきたクラリスに尋ねた。

身バレが怖いけど、1人にもしておけないからな。



「え?! もちろん行くけど!!」


「大丈夫か? バレないかな…。アンナさんに送ってもらう封書については俺でも渡せるけど?」


「髪切ってるし、帽子をかぶって変装してるから大丈夫でしょ。そもそも、私ロダーレに来たことないから」


「うーん…。まぁ、とりあえずやるだけやってみるか!!」



おそらくバレないとは思うけど、バレたらバレたでダッシュで逃げれば何とかなるだろ。

その辺は出たとこ勝負だな。


…ってなことを考えてたらあっという間に教会に着いた。

早速、馬車を止めて建物内に入る。



「ここの教会は初めてなんですが、祈りを捧げてもいいですか?」


「もちろんです。こちらへどうぞ」



俺たちはシスターに礼拝堂へと案内された。

そこには当然誰かさんの像がある。

これはやっぱりそういう流れなのかなーなんてことを考えながら祈りを捧げた。



「何で最近全然会いに来てくれないんですか!!」



ですよねー。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る