第291話 巣立ち
「今日出発だってのに悪いな」
「いえいえ、俺にはアイテムボックスがあるのでこれといった準備は必要ないんで、これくらい全然問題ないですよ」
「リンダの奴、昨日のパンが相当気に入ったのか、あれからも煩かったからさ…」
次の朝、予定通り俺はロビンさんにフレンチトーストの作り方を教えた。
これで俺たちは後ろ髪引かれることなく、サザンベールを出発出来るはずだ。
練習で作ったフレンチトーストの朝食を終えた俺たちはすぐに出発することにした。
「それではロビンさんリンダさん、またそのうち来ますので!!」
「おう。魚醤作って待ってるぞ!!」
「クラリスちゃん、みんなもいろいろとありがとうね」
「はい。ロビンさんもリンダさんもお元気で!!」
ロビンさんとリンダさんが見送る中、俺たちは馬車で南風を出発した………のだが
グスッグスッ
「ほらクラリス、いつまでも泣いてないでしっかりしなさいよ。昨日リンダさんに言われたばかりでしょう?」
そう。
南風を出た途端、クラリスが号泣し始めたのだ。
最初はみんなも微笑ましく眺めていたものの、それがサザンベールを出ても続いていたため、我慢しきれなくなったフィリア王女が叱責し出したようだ。
空気が悪くならないうちにちょっとはフォローしておくか…。
「フィリア王女、クラリスはこれからエピリシアを捨ててオルティアに入るんだ。言わば巣立ちだ。少しは大目に見てやってよ」
「全く…シーマさんは甘いんだから。私のことも大目に見て欲しいものね」
「それは大丈夫だ。フィリア王女がクラリスのためを思って言っているのがわかってるからな」
「フンッ!!」
どうやら図星だったのか、フィリア王女は顔を見られないようにとそっぽを向いてしまった。
何だかんだで友達思いなのは良いことだ笑
ここからフィデールまで約3日か…。
シェスターは十分休ませたし、食料も買い込んで調理済だからな。特に問題がなく順調に進めば予定通りに到着するはずだ。
もうエピリシアでやり残したことはないよな?
んっ?
あれ?
やべぇ。1個だけあったわ。
「クラリス、クローツの教会シスターでアンナさんって知ってるか?」
「えっ?! 何でシーマさんがアンナさんを知ってるの?」
質問を質問で返すなよー苦笑
「俺たちがクラリスの情報を探していた時に、クローツの教会で会ったんだ。自分の危険を顧みずにいろいろと教えてくれた。今回のクラリス救出の恩人だ」
「そうだったんですか…。アンナさんが…」
「話を聞いた限りではアンナさんにとってクラリスこそが恩人らしいけどな。クラリスによろしくって言ってたよ」
「そんなことまで…」
「もしクラリスが国外逃亡したとわかったら、教会のクラリス派はどうなってしまうんだ?」
「………立場が悪くなるでしょうね。最悪の場合、破門になるかと」
「やっぱりそうか。そうなる前に何か手を打っておきたいところだけどな…」
クラリス1人のために、大勢のクラリス派の人達が苦しむのは気が引ける。
何か妙案はないものか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます