第152話 王都の市場
俺たちは朝食を済ませた後、イルマさんに場所を聞いて王都の市場にやってきたのだが…。
デカイ。
さすがは王都だ。
規模が地方の街とは違いすぎる。
この国のものは全てココで手に入れられそうだ。
新しい食材に出会えるかもしれないと思って、俺も意気揚々と市場内を巡って見るものの、取り扱う量が多いだけで意外と珍しいものはなかった。
念の為、お店の人にも聞いてみたが置いてある商品の種類はこの数年ほとんど変わらないそうだ。
逆に言えば、
王都の人々はもちろん、王家についてもこれらの食材で満足しているということだろう。今度、フィリア王女にその辺のことを聞いてみよう。
それにしても、参ったな。
特に調味料関係に期待してただけに、方針変更を余儀なくされる。
今あるものを上手く組み合わせながら、何か新しいものを考えていくしかないな...。
とりあえず、いろいろと使い道の多そうなものはたくさん買って、時間かけて作り込みをしてみるかなー。
俺たちは必要な買い物を済ませてからヒーラに戻った。
「おや? 早い帰りだね! 何にもなかったのかい?」
「残念なことに、珍しいものはなかったですね」
「そうかい。確かにそれは残念だったね。でもね...」
「でも?」
「...いや、何でもないよ」
「...」
イルマさんは明らかに何かを言いかけて、そして止めた。
何だろう...それが気になる。
「そうだ、ちょうどいい。私のポーションの作るところでも見ていくかい?」
「...それでは、せっかくなので」
何故か急にイルマさんのポーション講座の時間になった。
フィリア王女もフォルティスさんも一目置く人のポーション作りだ。見ておいて損はないだろう。
「まず薬草をすり鉢で潰して、それを蒸留水に入れて、魔力を込めながら混ぜ合わせるんだよ」
「「「おぉー!!」」」
説明しながらの実践なのに、熟練らしく淀みのない動きであっという間にポーションを作ってしまった。
おそらく、調合のスキルでも持っているんだろうな。素人がやっても同じようにはならないだろう。
「ポーションっていうのは実に繊細でね、魔力の込め方ひとつで良くも悪くもなったりするんだ。分かったかい、シーマ?」
「!!」
そうか...。
今わかったよ。
イルマさんはこれをわざわざ俺に見せてくれたんだ…。
料理も同じだ。
調理次第で良くも悪くもなる。
何も珍しい食材ばかりを探さなくてもいいんだ。
無いなら無いなりに、今あるものをただ純粋に突き進めていくことも必要なんだ。
イルマさんに言われなければ気付かなかったかもしれないな...。
ホント、スゲーなこの人。
敵わないわ。
「イルマさん、貴重なものを見せていただきありがとうございました。俺が今やらなければならないことが見えたような気がします!!」
「そうかい。それはよかった。それなら...」
「...なら?」
「私の分も頼んだよ」
「...」
台無しだー。
やっぱり前言撤回しようかな...。
この人もただの食いしん坊かも。。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます