第139話 鑑定持ち
「えっ?! 薬草ってそんなに種類あるんですか? 」
さっきのおばあさんの言葉に気になることがあったので聞いてみた。
「あんたがそう聞いてくるってことは、鑑定ではそこまでわからないってことなんだね?」
「そうですね。鑑定のレベルが上がれば分かるのかもしれないですけど」
「それは仕方のないことだよ。見分けられないものを区別出来たら、それは凄いことだからね。
私だって薬草の違いも分からない中で、何となく合う合わないがあるなって気が付いただけだからね」
それはそれでスゴいよな。
薬草の声でも聴こえてるんじゃないのか?
薬草にもいろいろと性格みたいなものがあったりしてな…。
今度エルピスに聞いてみようかな。
「いやいや、それを見つけただけでもスゴいことじゃないですか。薬草と花を掛け合わせて香りを生み出すなんてそうそう出来ることじゃない。ちなみに、この香りのレシピは商業ギルドで売ってたりします?」
「ん? 何だいあんた、このレシピが欲しいかい?」
「今は訳あって冒険者をして休業してますが、俺たちはコスタで宿屋をやってるんです。この香りを宿に取り入れたいなって思ったんです」
「…」
ん?!
急におばあさんが急に黙っちゃったな。
何か悪いこと言っちゃったかな?
取り敢えず謝っておくか…。
「…いや、ダメならいいんです。自分で何とかしてみますから。無理を言ってすみませんでした」
「ね、ねぇシーマ。そろそろ今日の宿を確保しておかないと…」
おぉー、シェリルが空気を読んで店を出れるきっかけを作ってくれた。ナイスフォローだ。
「そうだな。宿を探しに行こうか」
「うん…」
まだ黙ったままのおばあさんに、店を出る前に感謝を伝えておくことにする。
「それじゃ、俺たちは行きますね。いろいろと教えていただきありがとうございました。また立ち寄らせて下さい」
俺たちは礼を言って店の外へ出ようとしたその時、おばあさんから声がかかった。
「あんた達ちょっと待ちな!」
「?」
何故呼び止められたのか訳も分からずにいると、おばあさんが続けて話しかけてきた。
「あんた達、泊まるところがないならウチに泊まっていかないかい? 今はこんな感じだけどココは元々宿屋だったせいで部屋ならいっぱいあるんだよ」
「「「!!」」」
「ご飯は作ってやれないけど、鑑定持ちのあんたがちょっと手伝ってくれたら、宿代は要らないけどどうだい?」
おばあさんからのまさかの提案だった。
宿代も3人で泊まればそれなりに嵩む。
俺は嫁ズに視線を送りどうしたいのかを確認すると、2人とも頷いていたので問題ないのだろう。
いくつか確認してから決めるか。
「いくつか確認したいことがあるんですが…」
「何だい?」
「俺たちはどのくらいまで王都にいるか分かりません。突然何日か帰って来ないことも考えられます。ある程度の自由は効きますか?」
「私だってあんた達をココに縛り付ける気はないから問題ないよ。時々鑑定で助けてもらえればそれでいい」
「わかりました。これから少しの間お世話になります。俺はシーマといいます。こちらがセレナとシェリル。2人とも俺の婚約者です」
「「よろしくお願いします」」
「私はイルマ。よろしくね。旦那が生きてた頃は宿屋を兼ねてたんだけど、今は一人で薬屋をやってるんだ。
そんなことよりもシーマ。こんな綺麗なお姉さん2人とも嫁にもらえるなんて、あんた甲斐性があるんだね!」
「はぁ。まぁ、どうなんですかね」
やっぱり可愛い嫁が2人もいるとほぼ必ずと言っていいくらい弄られるよな…。
そのうちフォルティスさん達にも会うことにもなるんだろうけど、いろいろ言われるだろうし、面倒臭いことこの上ない。
この後、冒険者ギルドに行かなきゃいけないんだけど酷く気が重い…。
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