第107話 使徒?
聞き覚えのある声が、突然俺の頭の中に直接話しかけてきた。
もしかしてエルピスか?
「そうです。あなたのエルピスです」
...。
まぁいいや。聞き流そう。
こんなこと初めてだけど、何かあったのか?
「そうそう、緊急事態なんです!!
ここから2キロくらい先で魔物に襲われている少女を助けて欲しいんです」
わかった。その理由は?
「私の熱烈な信者であると共に...この国の王女だからです!!」
マジかー。
ヤバいやん。間に合うの、これ?
「だから早く行って下さい!!」
とにかく全力でやる。
また後でな、エルピス。
「ごめんシェスター、大変なことが起きてるらしいんだ。急いでくれ!」
おっ!スピードが上がった。伝わるかどうかは賭けだったが、言ってみるもんだな。
「シーマ、スピードが上がったけどどうしたの?」
「セレナ、シェリル。詳しい説明は後でするから2人にお願いがある。
この先、2キロもない距離で少女が魔物に襲われているらしい。どんなことをしてでもいい、助けてやってくれ。
それは例え俺が死んだとしてもだ。わかったか?」
「わかった。理由は後で聞くからね!」
「ボクにもちゃんと聞かせてよ!」
悪いな。
今は本当に説明してる時間がない。
せめて魔物が何かが分かればなー。
「セレナ、サーチにはまだ引っかからないか?」
「まだね。シェリルは?」
「ボクのほうもまだだ」
どうする?
今出来る最善の準備は...。
「セレナ、サーチはシェリルに任せて弓の準備を頼む。出来るだけ多くな」
「シェリル、サーチにかかったらセレナに教えてやってくれ」
「セレナ、サーチにかかった!
敵は左前方。数はじゅう...ご!」
かなり多いな。
ヤレるのか?俺たちだけで。
いや、ヤルしかないよな。
「セレナ、難しいことをお願いするが、襲われている少女を避けて撃ってくれ」
「シェリル、お前のスキルが頼りだ。状況を把握したらこの馬車から飛び出して、少女を救い出してくれ」
「「...」」
「見えた。あれはレッドボア! 矢を撃つよ!」
シュッ
シュッ
「まさか、あれは王族の馬車? 大変!
シーマ、ボクも出るよ!」
シュッ
シュッ
襲われている少女は馬車の中か。
外はレッドボアでよくわからんな。
バリアで馬車を囲むしかない!
「バリアー!!」
よし。馬車が透明な箱で覆われた!
「シェリル、向こう側から馬車に向かってくれ。バリアの中は入れるはずだ!」
「セレナ、ゆっくりでいいからレッドボアの頭を狙って撃ってくれ!」
シェリルには大きな声で、セレナには小声で指示を出し、俺は馬車近くのレッドボアを剥がしにかかる。
「ストーンバレット!!」
よし、やっぱりバリアの中の馬車には当たらない!
「ストーンバレット!!」
「ストーンバレット!!」
よし、だいぶレッドボアを削れたな。
セレナのほうも順調だ。
後は俺が剣で片付けようかと思って馬車を降りた途端、バタバタとバリア近くのレッドボアが倒れた。
シェリルの仕業か。
「よしシェリル、一気に片付けるぞ!」
「うん!」
俺は夢中で剣を振り、シェリルはその間を突いてナイフで仕留めにかかり、何とかレッドボアを全て殲滅出来たのだった。
あー、疲れた。
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