第66話 バラす
「何者って…」
「だって、市場で『 がいも』を買い占めるし、『 バスタ』を定期的に欲しがる冒険者なんて普通じゃないもん」
「確かに」
「それで?ホントのところは?」
うーん。
隠してもしょうがないし、むしろここは打ち明けてしまったほうがいい流れだな。
「俺…というか、俺とセレナはコスタで『 精龍亭』って宿屋をやってたんだ。訳あって今は休業して冒険者をやってるけどな。いずれ再開する時のために『 バスタ』の仕入れ先が欲しかったんだよ」
「精龍亭…って、確かアイゼンの幻陽が贔屓にしてたって噂の宿屋だよね?」
…。
あの人達どんだけ有名なんだよ笑
さすがはAランクだ。
実際はただの食いしん坊だけど笑
「まぁ、そうなのかな?!」
「こんな若い2人がやってたなんて…」
「あら、私たちが若いっていうなら、シェリルだって若いじゃない?」
「ボクはいろいろと環境が特殊だから…」
「そんな訳だからさ、『 がいも』や『 バスタ』のこともそうだけど、俺たちはルート商会…いや、シェリルとの繋がりが欲しいんだよ」
俺は素直に思ってることを言った。
この何日間でシェリルのことは分かってきたつもりだ。
この出会いを、護衛依頼だけの関係にしてはもったいなさすぎる。
「…まさかこんなところにも商機が転がってたなんて思ってもなかったよ…」
「どうだ?」
俺がそう言うと、シェリルは徐ろに立ち上がって頭を下げてきた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
あれ?
何だか立場が逆転してないかい?
俺たち護衛と依頼人の関係では?
「いやいや、シェリル。そういうのはやめにしよう。俺たち…もう友達みたいなもんだろ?」
「そうそう、もう友達でしょ?」
「…ありがとう、2人とも。これからもよろしくね」
「あぁ、こちらこそよろしく」
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食事を終えた俺たちは、今回のシェリル一番の目的である市場へ向かった。
一般的に解放されている市場とは別の、卸業者向けの市場で、週に1度だけ開かれているとのことだ。だからということではないが、何かしら毎回違うものが入ってくるらしい。
護衛をしながらシェリルに付いていくと、どんどんシェリルが買い付けをしてていく。そんなに買って馬車の荷車に積めるのかな?
当然俺たち用の『 がいも』と『 バスタ』も買ってくれていた。
しかしながら、俺的には他にこれといったものは見つからなかった。
米とか醤油があればよかったんだけど、そもそもこの世界に存在しているかもわからないからな…。
シェリル的には順調に市場での買い付けを終えたらしいので、俺たちは予定通りに明日帰ることなった。
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