第61話 幕間 シェリルと(セレナ視点)
「シェリル、馬車に寝せてくれてありがとね」
「いやいや、ボクはセレナさんとゆっくり話してみたかったからちょうどいいんだ」
「それじゃそのお礼に、クリーン!!」
私はシェリルにクリーンの魔法をかけてあげた。
「うわー、ありがとう!! 今日はシャワー浴びれないから本当にうれしいよ」
「いえいえ、どういたしまして。服は明日の朝にでもシーマに渡せば、すぐにウォッシュしてくれるよ」
「...何、この至れり尽くせり感は...」
私たちはシェリルの馬車の中で横になった。外で1人寝ているシーマには悪いけどね。
「それにしてもシェリルも大変よね。こんな若いうちから買い付けとか」
「大変だけど、必要なものを必要な人達へ届けることができるという楽しみもあるんだ。会長も自由にやらせてくれてるしね」
「商会の跡を継ぐの?」
「ううん。ボクには兄がいるから。商会は兄が継ぐことになってるんだ」
「それなら自由じゃないの。でも大きい商会の娘だと結婚の引き合いとか多そう…」
「ボクはこんな性格だからね。話はあってもそれ以上先には進まないかな。そんなことより、シーマさんとセレナさんは結婚するの?」
「えぇ? うん…まぁ婚約はしたかな」
「そうなんだー。いいなー。羨ましいなー」
「シェリルだってその気になればすぐ結婚できるでしょう?」
「そうなんだけど、近寄ってくる人達って、ハッキリ言ってボクよりは商会目当てだからさ」
「そんなこと…」
「あるんだよねー、これが。だからボクは商会とか関係なしに、ボクを見てくれる男がいい。シーマさん、ボクももらってくれないかな?」
「えぇー!!」
「ダメかな?」
「それはシーマが決めることだから…」
「じゃあセレナさんはいいの?」
「シーマが決めたことなら。でも、シェリルは私がいてもいいの?」
「もちろん。そうじゃなければこんな話しないよ」
「それはそうだけど…。シーマのどこがいいの?」
「それ、婚約者がボクに聞くこと?」
「私は幼なじみだから、ずっと一緒にいすぎて気が付かない部分もあるし」
「そっか。まずは普通にカッコイイでしょー。あとは、若い冒険者にしては剣も魔法も使えて強いよねー。今日の戦闘を見てわかった。あと、アイテムバッグ持ってるでしょー。でも決め手は、セレナさんを馬車で寝かせてってお願いしてきたこと。普通は護衛の人が依頼主にお願いする事じゃないもん。それくらいセレナさんが大事なんだってわかったんだ。優しいよねー!!」
「…」
たった1日なのに、人を好きになる要素ってそんなにあったんだ。
いつも一緒にいるから、シーマがすることはそれが当たり前だと思ってた。
他の女の子からは、シーマがそういう風に見えるんだ。
さらにシーマの料理を食べてしまったら…なんて考えるまでもないか。
「ん? セレナさんどうかした? 」
「え?」
「急に無言になったからさー」
「ううん。何でもないよ」
「セレナさん、この話は内緒だよ」
「何で?」
「まだ好きになりかけだし、これからどうなるかわからないしさ」
「シェリルがそう言うなら、私からは何も言わないし、何もしないよ」
「ありがとう。セレナさん」
これからか…。
もうどうなるのか目に見えてるけどね。
私も覚悟を決めておきますか。
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