第45話 グランツ



グランツという街は、オルティア国の王都オルトからさほど離れてなく、隣国であるエピリシア教国からも近いことから物流が盛んで『流通都市』とも呼ばれている。


物流が多いということは当然人も多い。

さらに街の近くには魔物が多く住み着く『魔の森』があることもあって稼ぎにくる冒険者も多い。そんなこんなでこの街の人口は王都には及ばないものの、この国で3本の指に入るくらいの規模に成長したのだ。



俺たちがグランツで目的としたのは、

・魔の森で鍛えること

・流通している食材の確認

この2つだ。


そんなに急ぐことでもないが、あまり悠長なことも言ってられない。まずはおすすめされた宿屋に行って宿を決めてこないといけない。場所はすでに衛兵さんに聞いてある。



グランツのメイン通りから少し外れたところに、目当ての「風魔亭」はあった。

扉を開けて中に入るとカウンターの向こうに30歳前後の男女が立っていたが、俺の目に入ったのは女性のほうだけだった。


確かに綺麗だ。

あの村の宿主が言ってことは正しい。



「!」



セレナもいい歳の取り方すればあんな感じになるのかなーなんてて思っていたら、そのセレナが肘で俺の脇腹を突っついてきたので、我に返って男性のほうに声をかける。



「今日から泊まりたいんですが部屋は空いてますか?」


「期間はどのくらいかな?」


「とりあえず30日くらいで、場合によってはさらに延長しようかと」


「ちょうど長期用の部屋が1つ空いたばかりだから問題ないよ。料金は6日ごとの前払いで銀貨3枚になるけどいいかい?」


「大丈夫です」


「料理は朝と夜が付く。要らない場合は前持って言って欲しい」


「わかりました」



そう言って俺は銀貨3枚を渡して部屋の鍵を受け取った。そして早速部屋に行こうと思ったところでまた男性に声を掛けられた。



「お兄さん達は冒険者だろ?どこから来たんだい?」


「コスタです」


「コスタか、ちょうどいいな。精龍亭を知ってるか?」


「はい。もちろん」


「夫婦が亡くなってから息子がやってたけど最近閉めてたって聞いたんだ。本当か?」


「えぇ…。そうですけど何か?」



急にウチの宿のことを聞いてきたけど何なんだろう。親と知り合いなのかな…。それにしても宿を閉めたの数日前なんだけど情報が早いなー。SNSがあるわけでもないのに。



「やっぱり本当だったのか…。」


「何か関係があったんですか?」





「俺らはな、精龍亭の2人に憧れてココを始めたんだよ」



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