第34話 スキル



「俺にはエルピス様からもらったスキルもいくつかあるんだ」


「そうなの?」



抱き合ったままの状態で俺が話し始めたら、セレナが体を離して返事をした。

もうちょっとくっついていたかっただけに、もったいないことをしたな。

離れてしまったものはしょうがない。

気を取り直してまた話し出す。



「隠してたわけじゃないんだけど、急にスキルが発現したとしてもおかしいかなって思って言わなかったんだ」


「ふーん。それでどんなスキルなの?」


「鑑定やアイテムボックスとか」


「レアスキルじゃない!」


「隠蔽魔法で鑑定されても見えないようにはしてるけどね」


「隠蔽魔法まで…」


「空間魔法もあるけど…」


「もう何でもありね。さすがはエルピス様。でもそれだけあると、ちょっと嫉妬するわね」


「やっぱりそうなる?」


「当たり前じゃない。誰もが欲しがるスキルなんだから」



セレナが言うんだから、まぁそうなんだろうな。

問題?なのはそれがほぼほぼ使われていないことだろう。宝の持ち腐れってやつだ。

でも、このタイミングでセレナに話せたのは大きな意味を持つ。

セレナの前で堂々と使えるようになるからだ。



「これからはどんどん使っていくからさ。使わないとレベルも上がらないしね」


「そうね。せっかくのレアスキルだもん、使わないなんて損だよ」


「でも、しばらくはセレナの前でしか使わないよ。何かあっても面倒だし」



持っている人が極端に少ないからレアスキルなのだ。

持っていると知られたら、拉致られる可能性だってある。本当に信用出来る人の前でしか使えないんだ。気を付けないといけないな。




「この際だから、シーマに聞いておきたいんだけどさ…」


「なんだい?」


「シーマの料理はスキルなの? それとも異世界のものなの?」



おぉーそう来るか。

幼なじみが急に全然知らないを作り出すんだもん、そりゃー気になるよねー。



「料理のスキルは宿を継いだ時に発現したけど、料理そのものは異世界のものだね」


「やっぱりねー。この世界にないものばかりだもん。それってまだまだいっぱいあるの?」



ん?

何だか方向性が変わってきたな。

それってただ単に美味しいものが食べたいってことじゃ…。

いやいや、セレナに限ってそんなことは………ない、とは言えないな。



「まだまだあるけど、食材や道具がないから作れるものは限られるけどね」


「そうなんだ…」



うん。

あからさまにがっかりしてるね。

そんな顔は見たくないから、ちょっとだけ喜ばせておくか。



「また何か作れるようだったら作ってあげるから」


「ほんと?」


「あぁ。約束するよ」


「やったー!」



可愛い笑顔はいつ見てもいいもんだ。

こっちも嬉しくなる。


この笑顔を守るためには

俺も強くならないといけない。


そのために2年間冒険するって決めたんだから。




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