第2章 宿屋
第6話 帰宅
さすがセレナだ。
あっけなく帰宅許可をもらってきたので、お世話になった神官たちに礼を告げながら教会を後にした。
歩いて家に向かう途中、街のあちこちで建物が崩れてて、改めてスタンピードの脅威を目の当たりにした。
さすがにモンスターは全て討伐したようだが、傷跡というのはそうそう消えない。それは街も人も同様だ。それでも朝が来たからか、まばらに人は動いている。
そうこうしてるうちに家の近くまで来た。自分の家なのにやたらと緊張してきたが、心を決めて宿屋の扉を開けた。
「おう、シーマよく帰ってきたな!」
「シーマちゃんお帰り」
ガンマおじさんとリーザおばさんが、まるでそこにいるのが当たり前のように立っている。
「ガンマおじさん、リーザおばさん。セレナから聞きました。この宿のこと面倒見てくれてありがとうございました」
俺は頭を深く下げて感謝の礼をする。
「なぁに、当たり前のことをしただけだ。この宿が無くなると俺たちの野菜も売れないしな!」
ガンマおじさんはそう言うが、彼らの作る野菜は人気があるため、市場ではすぐ売れる。馴染みのウチには融通を利かせてくれてるのだ。
「お客さんたちに迷惑をかけずに済んだのはお2人のおかげです」
「いいのよー。本当に気にしないでいいから。困った時はお互い様なんだから」
「その通りだ。こんな時くらいは頼りにしてくれないとな!」
「本当にありがとうございました。非常に助かりました」
明るく振る舞ってはいるが、家族ぐるみで仲が良かっただけにガンマおじさんたちだってとても悲しいはずだ。それを表に出さないのはやっぱり大人なんだなって思う。
「気にしてるかもしれないから先に言っておくが、レギアスもシルビアももうお墓に入ってる。後でお墓参りに行くといい」
「そうなんですね…。何から何まですみません。」
後でお客の冒険者から聞いたことだが、父も母も激しい戦いだったため、遺体の損傷が激しかったらしい。そんな姿を息子には見せたくなかったんじゃないかってことだ。
「それでシーマ。お前はこれからどうするつもりだ」
ガンマおじさんの問いかけに、リーザおばさん、そしてセレナも耳を傾けている。
「俺はこの宿屋を継ぎます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます