第3話 転生3
気が付いたらベッドの上だった。
きっとこれが転生の影響なんだろう、2人分の記憶があって軽い頭痛がする。
少年の名前はシーマ。
何だかシーマと椎名で似ている……。
性格も大きく違わないみたいでちょっと安心だ。
16歳で、この世界では成人だそうだ。
新人の冒険者をしていて、職業は剣士。椎名守としての俺は剣を扱ったことはないが、今は理解出来ていたりする。
この国の名はオルティアで、
この街の名はコスタ。
ここは教会の治療室らしい。
シーマくんの記憶がそう教えてくれたのだ。
今はまだ朝のようで、昇ったばかりの朝日をカーテン越しに浴びていると、ふとお腹辺りに重みを感じる。女の子が横たわる俺にもたれかかるようにして伏せていた。
この子がセレナだ。シーマくんの記憶がそう告げている。魔法使いの冒険者でシーマくんとパーティーを組んでいたらしい。
肩くらいまである茶色の髪から、整った顔立ちをこちらに向けて寝ているようだ。横からでもわかる大きな胸が気になるが、ここで動いて起こしてしまうのも悪いので、そのままじっとしてシーマくんの生前の記憶を整理することにする。
まず思い出せるのはもう生きていないシーマくんの両親の顔だ。
精悍な父親レギアスと可憐さの中にも芯の強さを感じる母親シルビア。
2人とも元Bランクの冒険者として宿屋を営んでいたらしい。一人息子のシーマくんも初級の冒険者をしながらもよく手伝っていて、仲良く3人で暮らしていたみたいだ。
そんな幸せな日々が崩れたのは、スタンピードがあったからだ。
近くのダンジョンからモンスターが溢れて、この街に襲いかかってきた。シーマくんはセレナと一緒に、両親も元冒険者として戦った。その結果両親2人は亡くなり、それを聞いたシーマくんは気を失ったというわけだ。
いくら他人の記憶とはいえ、今となっては俺の大事な一部だ。悲しくないわけがない。
これからシーマとして生きていくんだから、それらの全部を受け入れなければならないんだ。あらかじめわかっていたこととはいえ、いざその時になるとその重さに耐えきれなくなる。
女神に精神耐性をお願いすればよかったかな…。かなり辛いわ、これ。
何気なく見回した部屋には、こちらを見守るようにして置かれたあの女神そっくりの像があった。
ここは教会内だもんね。
あっても不思議じゃない。
そこに居て助けてくれたのはやっぱりあんただったんだね。
『 ありがとう、エルピス。』
感謝の気持ちを投げかけたら、何だか女神エルピス像が微笑むようにして少し光った。
『 精神耐性のスキルが発現しました』
エルピスのような声が頭の中に聞こえてくる。
マジか!スゲー!
そうだ。せっかくだから、エルピスからもらった加護を確認しておこう。
『ステータス』って心の中で唱えてみると、目の前に半透明のウィンドウが現れて文字が映し出されている。
・シーマ•••人間
・年齢•••16歳(独身)
・職業•••冒険者(Eランク)
・スキル•••剣士Lv.1、生活魔法Lv.3、火魔法Lv.1、水魔法Lv.1、土魔法Lv.1、光魔法Lv.1、空間魔法Lv.1、鑑定Lv.1、アイテムボックスLv.1、精神耐性
・称号•••転生者、エルピスの使い
「おぉー!!」
いかんいかん、思わず感動して声を上げてしまった。
さすが異世界。魔法を使えるのね。
スキルの剣士と生活魔法は元々シーマくんが持ってたもので、その後のものはエルピスがくれた加護だろう。ちゃんと精神耐性も付いてる。俺の女神は凄いんだな。
それにしても、称号は見られたらマズイやつだよなー。どうにか隠蔽出来ないかな。
『 俺の可愛い女神エルピス様、異世界を無事に過ごすため、隠蔽魔法を与えて下さい。』
エルピス像に祈りを捧げると、また微笑むようにして光った。
『 隠蔽魔法のスキルが発現しました。』
早速『 隠蔽』と唱えてステータスをイジることにする。
・シーマ•••人間
・年齢•••16歳(独身)
・職業•••冒険者(Eランク)
・スキル•••剣士Lv.1、生活魔法Lv.3、火魔法Lv.1、水魔法Lv.1、土魔法Lv.1、光魔法Lv.1、精神耐性
とりあえずレアそうな空間魔法、鑑定とアイテムボックス、そして称号は隠しておくことにした。
『 またまたありがとう、エルピス。頑張って異世界を生きて行くよ。』
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