転ぶ。


 なにも無い場所で転ぶことがある。


 それは、大抵は自分の不注意だと思う。


 けれど、ふと気付いてしまった。


 なにも無い筈の場所で転ぶのが、自分だけじゃないということに・・・


 同じ場所で、同じように転ぶ人がいる。


 そこは平坦な道で、つまずくような石もなにも無いのに、なぜか足がもつれて、気付くと転んでいる。他の人も、同じような感じだという。


 ある日、幼馴染がその場所でドタドタと地団駄じだんだを踏んでいるのを見てしまった。


「なにしてるの?」


 ガスガスと地面を蹴る幼馴染。


「あ? これか? ここ通ると手がさ、足掴もうとしてウザいから蹴ってンだよ」


 ・・・俺の幼馴染は、視える人だ。

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