俺が何をしたって? side松村
先生が入ってくると、みんな一斉に席に座る。俺は元から座っていたし、あいつらと話をしている最中に用意をしていたので準備万端だ。
…まだ睨まれている、視線が気持ち悪いな。教室の隅でよかったと思う、本当に。
〜〜
「はい、これで授業を終わるぞ」
先生がそう行ってから礼をしてから1限目が終わる。やっと終わったと思い、あくびをしてて明日提出の課題を机の上に出し作業を始める。
それがあいつら4人組の逆鱗に触れたのか、俺の席に向かって走ってきた。
「てめぇ、生意気すぎだろ」
藤田が俺の課題のプリントを取り、俺の目の前でビリビリに破る。しかも誇らしそうな、見せつけるような表情で。全く生意気だと思うポイントが分からない。
というか、何をやっているんだ。理科の先生こと担任はまだこの教室にいるんだぞ。
「藤田!!!お前何をしている?!!」
「やべ!」
田中が焦って目を逸らす。先生は怒りでブルブル震えて始めた。
「まさか、お前ら松村を虐めているのか!??」」
確かに、事情を知らない先生からしたらそう見えるだろうな。
そうだ、その調子で先生もっと言ってやってくれ。
「ちがいます、先生虐めているのはおれではなくこいつです!!、こいつ蜂山さんの事虐めてて」
「…何?」
蜂山、その単語が出た瞬間先生の顔付きが変わる。この流れはまずいな、また委員長がLINEみせて空気が変わるパターンだ。こんなクソみたいなLINEの証拠でも、単純な先生ならすぐに信じて反応するだろう。
予想通り、食いついた!という顔で委員長がスマホを見せる。委員長は顔にすぐ出るな、感情が分かりやすくて大変助かる。
「…松村、お前蜂山の事脅して、暴言を吐いたりしたのか…?それは本当か」
先生はじろりとLINEの内容を眺めた後、今までに見たことがない怒りの感情を俺に向けてきた。しかし先生、真っ赤な嘘です。
俺が“いいえ“と答える前に須月が肯定する様に話す。
「そうなんよ?センセェ、ミチカ体調不良なのはそのせいやって言ってたで」
「…そうか、分かった松村。今日放課後職員室に来い、話をしよう」
そう言って先生は教室を立ち去っていく。
さっきの先生の言葉で4人組はそれぞれ勝ち誇った顔をした。須月はざまぁな笑みを、委員長は鼻息を鳴らし、藤田はドヤ顔を行っていた。田中は…少し微妙に周りに合わせる様に顔を作っている様に見えた。
…この学校の奴ら蜂山ミチカの事好きすぎるだろう。
そしてまた次の授業が始まる。
授業が終わる度、休憩が来る度4人組がきたが、まあどうでも良い話ばかりで一日が終わる。
ーそういえば先生から呼び出しをくらっていたな
…職員室に行った所で虐めた事を親に連絡され、怒られ終わるだけだろう。
めんどくさいし、今日は行かないで良いや。
俺は学校が終わると、4人組や先生に捕まらない様に素早く下校した。藤田が焦って後から追いかけてきたりもしたが走っている内にいなくなっていた。
ところで、あいつら先生にLINEを見せる時に俺にストーカーされていた事、性的行為を強要されそうになり逃げようとしたら殴られた事〜の会話は消したのか?先生は知らないようだったし…こんな事したら作り物だというとがすぐバレてしまうのに何故気づかない。
その内、話が噛み合わなくなるんじゃ無いか?
ー早くそうなって自爆してくれれば簡単なんだがな。
〜〜
次の日、今度はしっかりスマホを持ち、登校した。
また隣の席の蜂山ミチカは休みだった。心配してもらいたいなら今すぐにでも来ればいいのに。
……俺の考えとは何か違うのか?
「よお、ドクズの松村クン、新しいイスの座り心地はどうだ?昨日にやっておいた俺製だぞ?…ってあれ」
俺が彼女について悶々と考えていれば藤田が俺に一人で絡んでくる。
ーああやはりこの椅子はお前がしたんだな。
何故か朝登校してきたらイスの支える部分が全て折れ曲がっていたから、逆の方向に曲げて直しておいた。だが、ちゃんと折れた状態の写真も撮っておいたからな。
…俺が椅子になんの障害もなさそうにすわっているのをみて藤田がびっくりした顔をしてる、初めて見たな、こいつのこんな顔。
…一応証拠を集めやすい様に一応弱そうなフリでもしておこうか。
「今日朝来て、イス折れ曲がってだからさ…空き教室のイスと交換してきたんだけど…藤田君が…、?」
「いや、やっぱり空き教室のやつだよな!!ふ、ふざけんなよ俺がせっかく折ってやったのに」
「どうして、課題を破ったりイスを折るんだよ、ひどい」
「どうしてっててめえの俺に対する態度が悪いからだろ?!」
ふむ…どうやらこいつの脳みそは一センチぐらいしか無い様だ。俺とお前は会話したことが無いし、どっちかと言うと生意気はお前の方だろう。
しかも、蜂山ミチカにいじめを行ったから、では無く自分が腹を立てたからイスをおるというドドクズ中のクズ。
しかし、楽しくなってきたのか四人組がうしろからそーだそーだ、改めろと野次を飛ばしてきた。すると周りも賛同するようにそれに乗っかって、手拍子まで出てきた。
“かーえーれ“
“あやまれー“
こいつら蜂山ミチカから虐められたとか聞いたことも無いのにこんなフリしているのが最高に人間らしくて好きだ。最高に最悪な学校だな。
本当は虐めてないとか言えば、信じてくれる人は現れるかな?
「おい松村!!なぜ来なかった」
盛り上がっている教室の中、昨日俺が先生の呼び出しを無視したから、頭に血が上ったのかドン、と強い音をたてながら扉を開ける。ま〜恐ろしい恐ろしい。
「先生!!こいつ昨日逃げる時、先生のこと頭も悪いしすぐ怒るし、そんなんだから彼女出来ないんだよとか言ってました!!」
委員長…お前、そういう事が大好きなんだな。
今回は証拠も本当に何もないただの言いがかりだ。
「してませ…」
「ッッお前!!」
バン!!先生は一歩間違えれば喋っている途中の俺を殴りそうな程近くまで拳を近づけ、寸止めしては壁を殴る。殴るなら、殴れば良いのに…そしたら俺の得になるのに。
「ッチ、まあ…いい、親御さんにも連絡はつかなかったしな…お前俺をあまり怒らせない方がいいぞ!!」
また不機嫌そうに教室を出て行った。藤田といい先生といい怒りすぎだ。
ーさて、今日も先生と藤田に殴られかけたり物を壊されたり、散々な一日だった
二人だけではない、4人組を主格とした完全な虐めが俺に行われていた。シャーペンを折られたり、体操服を隠されたり、帰るために必要な靴を取られたり。まあ、勿論藤田の靴ロッカーを開けてみたら普通にあったので取り返したが。
いいのか?こんな順調で俺が虐められる側になって、こんな事蜂山は予想できていないんじゃないのか?冤罪をかけるだけじゃなかったのか?
〜〜
三日目
今日は俺も学校を休もう、やらなければいけない事があるからな。
〜〜
四日目
遂に来た。
彼女が教室に入ってきた瞬間、須月は心なしか焦った様な顔をしているように見えた。彼女は扉の前で須月と他の女子に凄く心配されている。
どうだ、嬉しいか…?
“聞いたよ、松村君にいじめられたんだってね“
“可哀想…ごめんなミチカ、今まで気づいてあげられへんくて“
「はい?」
悲しまない…?普通泣いたり慰めてもらったりするものかと思っていたが。
…蜂山ミチカ、君はもしかして…いや、まさか。
ーそのまま授業が始まり、周りがうるさくなった頃彼女はヒソッと俺に言った。
「ねえ、私の事虐めてたってマジ?」
…本当に知らないのか?
じゃああのLINEは偽物?
「虐めてる訳ない」
「だよねやっぱそうだよね、ほんと何?この噂」
…意外にも彼女はとても不審がっている様で気味悪がっていた。
まだ彼女がクロの可能性がある、ここで少しでも前やばいと焦った様子を見せればクロだ。
「?君が流したんじゃ無いのか」
「違うよ!虐められたとか今聞いたばっかりだし」
いきなりそんな事を言われてびっくりした〜という顔をすれば、急に納得するようにウンウンとうなづいたり彼女はしていた。…この反応はもしかしたらシロの可能性がある。あの、クラスで人気で優しくて文武両道な学校1美人な彼女は仮面ではないかもしれない。
なら、彼女が主犯でないと、考えるとすれば…四人組の内の誰かがこの冤罪計画を立てたんだな。
「一緒にさ、真犯人探さない?」
彼女から意外な言葉が出て少し驚いた。
どうやら彼女は好奇心旺盛な様だ。しかし協力者ができるのは良い事だからな、此処で拒否するのは勿体ない。
「…!良いよ」
…ずっと気になっていた、蜂山ミチカは少し抜けている所があるのか、こんなにも大きく書かれたイスの暴言に気が付かないのか?裏だから見えないとしても、座る前に気づくだろう。
「所で蜂山さん、そのイス気にならないの?」
「っぅえええ?!」
彼女は真っ青な顔で俺をみる。…気づかせるべきでは無かったか…?
ここで信頼を失うのはまずい。俺ではないと証明せねば。
「俺シャーペン以外持たないタイプ…、だから」
「っ、はは。疑ってなんか無いよ」
「…」
そう言って笑った隣の女子は、言葉にできない程美しかった。
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