第14話
そしていつか必ず殺してやろうと思ったのですが、その前にどうしても聞いておきたいことがあったので質問してみることにしたんです。すると少し考えた後でこう答えてくれました。
「そうだね……まずは謝罪をさせてほしい。騙すような真似をしてすまなかったと思っているよ」
それを聞いて素直に頷いていると更に続けて言いました。
「それともう一つ謝らなければならないことがあるんだ。実は君の母親なんだけどね、僕が殺したんだよ」
その言葉に耳を疑いましたが、どうやら本当のことのようでした。というのも、彼女は以前から体調を崩しており、いつ亡くなってもおかしくない状況だったようです。
そこで彼は彼女の病気を治す為に必要な薬があると聞いて探し回っていたらしいのですが、なかなか見つからずに困っていた時に偶然出会ったのが母親だったというわけです。
その話を聞いた時はとても驚きましたが、同時に納得もしていました。なぜなら彼女が亡くなってしまった原因は、恐らく不摂生によるものだと思っていたからです。
だからもし仮に生きていたとしても長生きはできないだろうと考えていたくらいなので、むしろ好都合だと思ったほどです。
ですが問題はどうやって殺すことができたのかということですが、それについては少し前に教えてもらったことがありました。
「僕の力で心臓を止めたんだよ」
それを聞いて納得すると同時に恐怖を感じていました。何故ならその力があれば誰だって簡単に殺せるだろうと考えたからです。
しかしそうなると疑問が浮かんでくるんですよね。果たして本当に彼は人を殺したことがあるのだろうかということでしたが、それについて尋ねてみるとあっさりと認めてしまったので驚きました。
ただし実際に手を下したことはないそうなので、あくまでも知識として知っているだけに過ぎないようです。そのため実践するのは初めての経験だったそうですが、それでも躊躇うことなく実行に移せたのはそれだけ本気だったからでしょう。
まあ、だからといって許すつもりはありませんけどね。そもそもの原因を作ったのは彼自身ですから当然と言えば当然の話ですよね。
それはさておき話を元に戻すと、ここからが本題になるのですが、先ほど言った通り母親の件に関しては恨んでいないことを伝えると、今度はお礼を言われたので戸惑いながらも受け流しました。
それよりもこれからどうするつもりなのか気になったので聞いてみたところ、予想外の答えが返ってきたので驚いてしまいました。
何でも既に準備が出来ているのでいつでも実行できるとのことだったので、一体いつの間にそんなことをしていたのかと不思議に思っていたら、ある物を手渡されたので確認してみると、そこには一枚の紙が入っていました。
何だろうと思って開いてみた瞬間、そこに書かれていた内容を見て思わず絶句してしまうほどでした。なぜならそこには信じられないことが書かれてあったからです。その内容とは次のようなものでした。
『拝啓 柊正一様へ 貴方のことは幼い頃から知っておりますが、こうして手紙をお送りするのは初めての事になりますね。本来であれば直接お会いしてお話ししたいところですが、お互いに立場上難しいと思うので手紙という形で連絡させていただきました。さて、早速ですが今回貴方をお招きしたのは他でもない娘のことについてなのですが、単刀直入に言わせていただきますと貴方には死んでいただきたいと考えています。その理由についてはいくつかありますが、その中でも最も大きな理由は娘が同性愛者だということが原因となります。つまり同性愛の禁止している日本において、娘は犯罪者予備軍ということになりますよね? そのような人間を放置しておくわけにはいきませんので、こちらで処分することに致しました。ですので大人しく殺されてください。もちろん抵抗しても構いませんが、その時はこちらもそれなりの対応を取らせていただくことになるのでご了承願います。では、さようなら』
読み終えた後、しばらく呆然としていると不意に声をかけられて我に返りました。どうやら彼が話しかけてきたようですが、内容はと言うと予想とは違っていました。
何と私のことを養子として迎え入れたいと言う話だったのです。それを聞いて初めは信じられませんでしたが、詳しく話を聞いていくうちに嘘ではないことが分かりました。
というのも養子縁組というのはそう簡単にできるものではないので、それなりに手間がかかるはずなのですが、どうやらすでに手続きを済ませていたらしく、後は私の意思を確認するだけだったそうです。
その為、改めて確認すると、こちらとしては願ってもない申し出だったため、喜んで受け入れることにしました。そして話し合いの結果、今後は親子として一緒に暮らしていくことになったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます