第7話
むかしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでおりました。
二人はいつも仲良く暮らしていましたが、ある日のこと、いつものように散歩していると、道端で一匹の子犬を見つけました。
まだ生まれて間もないようで、とても可愛らしい姿をしています。気になったので近づいてみると、どうやら怪我をしているようです。このままでは可哀想だと思ったお爺さんは、その子犬を抱き抱えると急いで家に連れて帰りました。
手当てをしてやると、心なしか表情が和らいだ気がします。これなら大丈夫そうだと判断したお爺さんは、その子犬を大切に育てることに決めました。
名前はどうしようかと考えていると、ふと思いついたものがありました。それは昔飼っていた愛犬の名前と同じものでした。その名前を付けることにしたのですが、本人は気に入ってくれたらしく、すぐに懐いてくれました。
それからというもの毎日楽しそうに過ごしていましたが、残念なことに寿命を迎えてしまったのです。悲しみに打ちひしがれていたところ、突然目の前に現れた者がいたのです。それは一匹の狐でした。その姿を見て驚いていると、いきなり話しかけられました。
「こんにちは、あなたにお願いがあるのだけどいいかしら?」
「なんだい?」
「実は私の娘を預かって欲しいのよ」
「娘だって?」
「ええそうよ、ほらここに」
見ると足元に小さな女の子が立っていました。見た目からして十歳にも満たない年齢だと思います。不安そうな顔でこちらを見上げているので、安心させるために笑顔で応えると、途端に笑顔になりました。しかしそれも束の間のことで、すぐに悲しそうな顔に戻ってしまうのです。一体どうしたのだろうかと思っていると、その理由はすぐに分かりました。なぜなら彼女はこう言ったからです。
「私はもうすぐ死ぬ運命にあるみたいなんです……」
それを聞いて衝撃を受けたお爺さんは慌てて理由を尋ねると、次のように話してくれました。
なんでも病気を患っているらしいのです。しかも治療法はなく、助かる見込みはないとのことでした。それを聞いたお爺さんは悩みます。
何故なら彼女を引き取るということは、同時に面倒を見なければならないということですから。いくら子供とはいえ相手は女の子です。もしも間違いが起きてしまったら大変なことになりますからね。
しばらく悩んだ末に結論を出しました。それは一緒に暮らすことではなく、最後まで責任を持って見届けることにしました。つまり、自分が死ぬまで面倒をみるというわけです。
すると、その子は嬉しそうに抱きついてきました。よほど嬉しかったのでしょう。その証拠に涙を流していました。
それを見たお爺さんは思わずもらい泣きしそうになりましたが、ぐっと堪えます。ここで泣いてしまったら格好がつかないと思ったからです。
それからしばらくして落ち着くと、改めて名前を付けてあげました。その子は大喜びしながら喜んでくれましたね。
こうして新しい家族が増えたことで賑やかになり、楽しい日々を過ごしていくことになりました。
さて、その後どうなったかというと、残念ながら亡くなってしまいました。亡くなる前に何か言い残したことでもあるのかと尋ねてみたところ、こう答えてくれました。
「今まで育ててくれてありがとうございました。おかげで幸せな人生を過ごすことができました」
それを聞き届けると、静かに息を引き取りました。最期まで感謝の気持ちを忘れずにいてくれたことが何よりも嬉しく思えた瞬間でした。
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