777円バトルロワイヤル

だら子

第1話

僕はこれからになる。

息を吐き、いつものスーパーに入った。

 


3年前、このスーパーにミキは殺された。





「ラッキーセブンだっ!!」

ミキは俺に笑顔を見せる。

「私が、余計なパン買ったから、ラッキーが降りてきたんだな」

僕はミキの笑顔が見れて一番嬉しい。


昼下がりの日曜日、

チキンのトマト煮込みに使う、トマト缶と隠し味のローリエを買う。それだけのためにスーパーに一緒にきた。


帰りに、ちょっと有名なジェラード屋さんに行く予定。


僕はいつものピスタチオ、ミキは、ストロベリーとミルクのWを食べるだろう。

まだ春だが、日差しが眩しい。


ジェラードはすぐ溶けるから、ティッシュ、もっと持ってくればよかったな

なんてぼんやり思う。ミキはすぐに手と口がベトベトになる。


そこに僕の電話が鳴った。

「あ、ちょっと仕事の電話だ。ごめん先車に戻ってて!!」


「わかった!!あとでさ、大事な話があるんだー!!いいニュース」


グッドポーズをするミキ。



僕は「はい大丈夫です」といいながら、ミキに右手を上げる。


すると、すぐに大きな音がした。


悲鳴が聞こえる。


「救急車を!!」


そんな声がして、胸騒ぎがして、電話をすぐに切り、走る。


そこには、横たわるミキがいた。


「トマト缶が潰れただけだよね?」


人間は極限に追い込まれると、何をつぶやくかわからない。

ティッシュ持ってくればよかったな。ああ、


そこからの記憶は、なかった。

救急車が来るまで、僕はミキの名前を呼び続ける。



結婚一年目の夫婦の日曜日だった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る