恋愛小説家
最上司叉
第1話
俺は恋愛小説家だ。
自分で言うのもなんだが昔はそこそこ売れていた。
女もとっかえひっかえだった。
それが今では契約を切られそうになっている。
そんな俺に神様が最後のチャンスをくれた。
バカな俺は今になるまで気づかずにいた。
ここはとある喫茶店。
俺の行きつけの店だ。
そこにある女が現れた。
女は眼鏡をかけていて見るからに地味だ。
俺の好みとは真逆だったが何故かその女が気になった。
その女はコーヒーを頼み店長となにか話している。
常連の俺が知らない女なのに。
俺は女に話しかけた。
「この店はよく来るのか?」
「昨日はじめて来ました」
「ここのコーヒー美味しいだろ?」
「そうですね」
それが俺たちの出会いだった。
俺たちは店で顔をあわせると話すくらいの仲になっていた。
その女がある日泣いていた。
俺は女に話しかけた。
「大丈夫か?」
「大丈夫です」
「そうか…」
「彼と少しケンカしちゃって」
俺は驚き固まってしまった。
「どうかしたんですか?」
女は言った。
俺は誤魔化すように
「泣くと余計にブスになるぞ」
と言ってしまった。
女は一瞬呆気にとられて笑いながらそうですねと答えた。
俺は小学生かと落ち込んだが女が笑っているからまぁいいかと思った。
そして次の日女が店にきていた。
俺はからかうように話しかけた。
「今日は泣いてないんだな」
「泣いてません」
「ブスになるからな」
「ブスじゃありません」
この前は笑ったのに何故か今日は怒っている。
俺は理由が分からない。
そこに男が現れた。
女はとびきりの笑顔で男を迎え連れてきた。
「今度彼と結婚することになりました」
俺は一瞬理解ができなかったが引きつった笑顔でおめでとうと言った。
俺はどこをどう歩いたかも分からないが家に帰ってきていた。
俺は失恋したのだ。
恋心を自分で自覚する前に。
多分俺の初恋だった。
俺は落ち込んだがいつまでも落ち込んでいられなかった。
俺はこのことを小説に書くことにした。
恋愛小説家 最上司叉 @moemee
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます