20歳年上の、あなた
@rabbit090
*
あなたは、ただただ優しい人だった。
お茶が飲みたいとワガママを言い、
分かっていた、私と彼の関係は、恋などではないということに、職場に馴染めずいじけていつも不機嫌な態度を表していた私に、浩之は親切を無条件で、投げかけてくれていた。
じゃあ、それって愛なの?と聞かれたら何だか、多分違っている。
私はただただ孤独で、叫びだしたくてずっと、かきむしられるような気持ちから逃れられなかったというのに、あなたといるとずっと、本当にびっくりするぐらい、穏やかに笑っていられた。
幸福を、享受している。
その事実をただ、受け入れていた。
なのに、私はあなたを捨てて今、お嫁に行こうと思うの。
「君が決めたことだから、俺は尊重する。」
「………。」
馬鹿な私は、一言も発することができず、ちょっと苦しそうな笑いを浮かべながら去っていくあなたを、いつまでも見つめていた。
その時は、生まれてから一番切ないような気持ちになっていたし、それが持て余してしまう程、甘美で、愛おしくて、だから罪悪感から逃れられなくて。
「ごめんなさい。」
あなたを裏切って、あなたを傷つけて、私は。
ただ黙って、泣くことすら許されないのだと、思った。
20歳年上の、あなた @rabbit090
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