私とドッペルゲンガーの恋愛事情

J.J.

第1話 世界には同じ顔が3人いるらしい

新学期、桜舞い散る中、私こと一ノ瀬舞雪いちのせましろは新入生として校門をくぐった。



「友達何人できるかな……♪」



教室にて席順を確認し、窓際の一番後ろに座る。隣の席の人が座った音がしたので、挨拶を……。



「おはよ……う……。」


「おはようございますわ……あら。」



隣には────私がいた。



「い、一ノ瀬舞雪。よろしくね……。」


「わたくしは二愛桜したながあいさですわ。……そっくりさんですわね。」



顔が似ているなんてものではない。全く同じ顔、同じ髪型、同じ声。でも親戚の集まりとかでも見た事が無いガチの赤の他人。



「……ドッペルゲンガー……?」


「わたくし、まだ冥府には伺わなくてよ。落ち着いてくださいな。」


「そうだよね、ごめん、愛桜ちゃん……。」


「よろしくてよ、舞雪さん。」



隣の席の女の子が、たまたま似ていただけ。世界には最低3人は同じ顔がいると言うし、私なんてよくある顔だから……。



「おっ、アタシがいる……。」


「え?」


「あらあら、まぁ……。」



ガタン、と大きな音を立てて愛桜ちゃんの前の席に座ったのは、制服のジャケットの前を開け放った────私だった。



「何これ、神様が面倒くさくなってコピペしたのかな。」


「そんなことはありませんわ。きっとわたくし達が出会ったことに何かしら意味があるはずです。」


「なーんかよく分かんねーこと言ってんなー。アタシは三ノ宮紅葉さんのみやくれは。よろしくな、くれちゃんでいいぜ!」



そんなこんなで初めてのHRホームルームが始まる。教室に入ってきた先生は女の人で、おはようございます、と挨拶してから話を始めた。



「今日から皆の担任になる田中です。一緒にお勉強していきましょうね。」



気のせいだろうか。ちらちらと見られている気がする。余程気になるのか、目が泳いでいるようにしか見えない。



「なー、あの田中センセー?めっちゃこっち見てね?」


「まだ田中先生がお話していてよ。前を向きなさい、紅葉さん。」


「でも、その話めっちゃしたいからHR終わったら話そ。」



くれちゃんは親指をグッと立てて前を向いた。田中先生は相変わらずこっちをちらちら見ているけど、HRは滞りなく進んで、入学式の為に体育館へ移動となった。



「さっきのHRだけで田中センセー352回こっち見てたぜ!」


「くれちゃん、数えてたの?」


「合ってるかどうかは分かんねーけどな!」


「紅葉さん、そろそろ列に並びますわよ。」



やっぱり赤の他人なだけあって性格は全然違うんだな。くれちゃんは元気っ子だし、愛桜ちゃんはお嬢様っぽいし……。顔が私なのが複雑だけど。



「つーかアンタらさ、どっちが誰?」



くれちゃんはジャケット全開だから分かるけど……そうか、くれちゃんから見たら私も愛桜ちゃんも違いが無いのか。



「私が舞雪。分かりやすいように前髪にヘアピン付けとこ。」


「わたくしは愛桜ですわ。……そうですわね、見分けがつくよう、眼鏡をかけておきます。」



こうして若干の見分けがつくようになった私達は、体育館へと向かうのだった。




(^ω^) (≧▽≦) (@-@)




入学式が終わって教室に戻った後、少しお話があってから解散となった。私達3人は教室に残り、現在の状況を確認することにした。



「私、影ヶ崎中学から来たんだ。2人は?」


「わたくしは私立花畑中学から来ましたの。」


「アタシ県外の河村第2中からー!」



何となく分かってはいたけど、全員バラバラだ……。じゃあ何でこんなにも顔が同じなのだろうか。先祖が同じなのかな?



「わたくし、ひとつ重大なことに気がついてしまいましたわ。」


「えっ、何か分かったの?」


「……どうやら、わたくしは惹かれているようですわ。」


「マジ!?ニューガク早々じゃーん!誰々?」



くれちゃんが身を乗り出して目をキラキラ輝かせている。確かに早い、早すぎる。一目惚れくらいのスピード感。



「貴女ですわ、紅葉さん。」


「えっ!?」


「……顔同じなのに?」


「同じ顔だからこそ、内面に惹かれたのですわ。元気いっぱいだけれど少し抜けている感じもあって可愛い。……わたくしの一生をかけてお世話がしたいですわ。」



プ、プロポーズ……早くない!?まだ初めて会ったばっかりなのに!くれちゃんどうしてるかな。

くれちゃんの方を見ると、顔が真っ赤だった。



「くれちゃん真っ赤だよ、大丈夫?これ、ちょっと凍ったペットボトルをタオルで包んだやつ。冷やしなよ。」



タオルで包んだペットボトルを差し出すと、私は手首を掴まれた。くれちゃんの顔が更に赤くなっていく。もう煙が出そうなくらいだ。



「ま、舞雪!アタシはアンタが好きだ!」


「えっ?」


「優しくてノリ良くて、気になって、めっちゃ見てたら段々ドキドキしちゃって……!」


「ちょ、ちょっと、舞雪さん!紅葉さんは渡さなくてよ!」



しょ、初日で三角関係に……。

これからの学校生活が思いやられる。だけどここは高校、出席日数が響く場所。休み続けることは出来ない。

ここはかなりの苦肉の策だけど、こうするしか……!



「くれちゃん、愛桜ちゃん。私、まだ3人で友達がいい。まだちょっと早すぎるからさ、1年後、また告白してよ。」


「わ、わりぃ、そうだよな……。」


「紅葉さんが言うなら、わたくしもそれで構いませんわよ。」



問題を先送りにしたに過ぎないけど、とりあえず1年間の猶予は出来た。

波乱の予感しかしない高校1年生の生活は、こうしてスタートしたのだった……。

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