釣果

@shibachu

 

 魚釣りに出かけたはずの上の兄貴が、兎と人参を持って帰って来た。「兎といえば人参だろう」と胸を張った。下の兄貴は膝を打った。僕は大葉を畑に返し、山葵を渓流に帰した。

 上の兄貴は魚を釣りに出かけた。鴨と葱を持って帰って来た。「鴨といえば葱だろう」と胸を張った。下の兄貴は「蕎麦がいいな」と言った。僕は畑から大葉を運んで刻み、渓流から山葵を運んですり下ろした。

 上の兄貴は魚を釣りに出かけた。鯨を持って帰って来た。「大きいだろう」と胸を張った。下の兄貴は「厨房に入らないよ」と言った。僕は鯨を海へ還した。

 俎上には兎と人参と鴨と葱。兎は暢気に人参を齧っている。上の兄貴は暢気に休んでいる。下の兄貴は「兎は食べない方がいい」と言った。僕は蕎麦を打った。兎は庭に連れて行った。

 客は兎の頭を撫で、鴨南蛮を食べ、「鯨が食べたかった」と口にした。兎の頭を撫でて帰った。


 僕は上の兄貴に「鯨を獲って来て」と頼んだ。上の兄貴は「鯨がいればな」と答えた。下の兄貴は「厨房に入らないよ」と言った。

 三人で海へ行った。鯨は沖で潮を噴いていた。上の兄貴は浜で潮干狩りをしていた。下の兄貴は「砂を抜かなきゃ」と言った。僕はバケツを取って来た。

 僕は上の兄貴に「鯨を獲って来て」と頼んだ。上の兄貴は「気分じゃない」と答えた。

下の兄貴は「銛が要る」と言った。僕は船に銛を積んだ。

 三人で沖へ行った。鯨は潮を噴いていた。上の兄貴は「鯨じゃなくて竜にしよう」と言った。下の兄貴は「剣が要る」と言った。僕は剣を鍛えた。鯨は竜に化けて火を吹いた。

 客は竜を見て喜んだ。竜は船と僕たち兄弟を燃やして帰った。客はそれを見て笑い、竜の頭を撫でて帰った。


 上の兄貴は「竜を倒そう」と言った。下の兄貴は「レベルが足りない」と言った。僕は「作戦を立てよう」と言った。

 僕たちは家に帰った。庭には二羽の兎がいた。上の兄貴は「兎を倒そう」と言った。下の兄貴は「経験値を稼げる」と言った。僕は兎を叩いた。2回当たり4のダメージ。兎は上の兄貴に飛びかかった。1回当たり1のダメージ。上の兄貴は頸を刎ねられた。下の兄貴は「クリティカルヒットだ」と言った。僕は逃げ出した。


 囁き─祈り─詠唱─念じろ!

 上の兄貴は元気になりました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

釣果 @shibachu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ