⑮連休明けカップル増殖編

「ず~っとしゅきぃ♪」

「世界一可愛いよ♪」

「教室中に無許可に咲き誇る花を一輪たりとも逃さず燃やしたいね?」

「さり気なく同意を求めるのはよして幼馴染ちゃん」

「ちょっと連休を挟むとゴキブリみたいに増殖するから嫌なんだよカップルっていうのはさあ!」

「仕方ないよ。人類には種族保存本能があって男女は引き寄せられるように出来てるんだから」

「他人事みたいに言ってるけれど密着しながら話してるあなたたち二人も大概よ!?」


~ ~ ~


「私たちは違うもん!」

「どこがよ!?」

「連休前からずっとこうだよ?」

「殺したいほど悪くて羨ましい……っ」

「しょうがないなあ。じゃ、今日だけ特別だよ?」

「え、うそ……幼馴染ちゃんが僕くんを貸してくれるなんて……」

「ツンデレちゃん」

「男装したアサシンちゃんじゃない!!」


~ ~ ~


「むきぃぃぃぃぃそうやって幼馴染ちゃんはすぐにおちょくるんだからあ!」

「わほほほほほ~い♪ 私が僕くんをレンタルするわけないじゃ~ん、あはは♪」

「キャッシング上限なしのクレカと交換!?」

「つーん」

「自分好みのイケメンを好きなだけはべらせる権利!」

「ぷい」

「幼馴染ちゃんの鉄のように堅い意志が――」

「……定期テストを身代わりで受けて上げるわ」

「とりあえず二泊三日くらいでいーい?」

「あっさり砕けて唐突に僕の価値がレンタルCDくらいに落ち込んだ」


~ ~ ~


「まゆみの手作りお弁当はおいしいなあ♪」

「もう、ダーリンってばぁ! 隠し味が効いてるのね」

「隠し味?」

「うん。愛情が、た~くさん、入ってるの♡」

「げろろろろろろろろろ」

「幼馴染ちゃんが無表情で吐瀉している」

「普段自分がやってることを唐突に見せつけられて自己嫌悪が止まらなくなっちゃったのね……」


~ ~ ~


「僕くん! わ、わたしって、普段あそこまであっぱらぱーなの!?」

「あっぱらぱーって久々に聞いたなあ」

「ねえ答えてよ!?」

「うーん、もしかしたらあっぱら何とかかもしれないけれど」

「そんな……私、あんな道端で遭遇したら迷わず横からグーパンしたくなるようなバカップルと一緒だったなんて……」

「舞い上がってるカップルに対して嫌悪する感情は残ってたのね」

「幼馴染ちゃん」

「おしまいだよ……私はもう……」

「でも君は誰よりも可愛いよ?」

「しゅき♡」

「そこいらに転がってるバカップルと大差ないくらいゆるゆるの倫理観!」


~ ~ ~


「えへへへへへへへへへへへ♪」

「腰紐が抜けたジャージくらいゆるゆるの表情をしてるね、幼馴染ちゃん」

「私はズボン、僕くんは上着♪」

「セットアップで一蓮托生だね」

「捨てられる時も一緒だね!」

「でも案外片方だけ破れて捨てられるパターンもあるよ?」

「ひぐっ……えぐっ……」

「たまに思うけれど僕くんって実は結構意地悪よね?」


~ ~ ~


「脳みそゆだるような会話してても許すよ~♪」

「幼馴染ちゃんが無差別にいちゃついてるカップルたちの頭を撫でている」

「今日好きピと放課後デートなの♡」

「がんばって♪」

「今日彼女と、キスしたんだ」

「すごいね~♪」

「……明日、初めての外泊なんだ」

「それは私がやってないからダメ」

「案外心狭かった」


~ ~ ~

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