第112話・スッキリ冴えた頭で発想の転換をします
ゲヘナダンジョンのゲート前で今日も天秤会の皆さんと合流しました。
すると、僕を見たソウ兄ちゃんが、驚きで目を見開きました。
「ほう……! 素晴らしいな。男子三日会わざれば刮目して見よ、とはよく言ったものだが、まさか昨日の今日でここまで見違えるとはな」
さすが
「それに後ろの二人も……、マイブラザーほどではないにせよ、昨日よりも気力が充実している。よほど何か、素晴らしきことがあったとみえる」
まぁ、色々とありましたので。
「なるほど、なるほど。まぁ良い。いずれにせよ、今日も良き日だ。こうして弟の成長を間近で見ることができるのだからな」
はい。今日もよろしくお願いします。
そうしてゾロゾロとゲートをくぐろうとしていると、
「ねぇねぇナナシ君」
天秤会の赤髪ショートツインテ娘、カイカちゃんから呼びかけられます。
何でしょうか、カイカちゃん?
「ひょっとして、コレ?」
そう言うと、カイカちゃんは握り拳の人差し指と中指の間に、親指を入れてみせました。
「ちげーよ、バカ」
「きゃんっ!?」
それを後ろで見ていたメラミちゃんが、カイカちゃんの頭を平手でスパンとひっぱたいたのでした。
メラミちゃん、ナイスです。
◇◇◇
「なぁ、ナナシ。さっきカイカがしていたのはどういう意味なんだ?」
というキャベ子さんの問いを無視して、ジリジリ暑い空間でエアコプター(エアコン付きカベコプターです)の作成に取り掛かります。
ひとまず、前回作ったのと同じ機能を付与したエアコプターを作るわけですが、
……ふふふ。実はこのナナシには、素晴らしい秘策があるのです。
ああ、いえ、それほど難しい話ではありませんけどね。
要は、必要な機能を付与した結界から、今度は不必要な機能を
というのも、結界術っていくつかのスキル効果が包括して備わっているものでして、浄化や消毒や保存、警報や感知、回復などの機能は効力の差はあれどデフォルトで有しているのですが、
そうした不必要な機能を削除しておくと、結界維持のためのリソースを減らせることを思い出したのです。
いや、今までは、魔力切れの心配がなかったことや森での生活中いちいち手抜かりのある結界を作る必要がなかったので、機能の付与や威力の増加ばかりしていたのですが、
たとえば、このダンジョン内で使っている道標用の灯火結界なんかは、強度と発光以外の機能は必要ないわけでして、
現在展開中の全ての結界から不必要な機能をまとめて削除すると、なんと今現在使用中のリソースを、六分の一にまで削減することができました。
つまり、それだけ余分なリソースを使っていたということでして、それらを圧縮することで、エアコプターを使用しながらでも攻撃用結界のリソースを捻出することができるようになったのです。
さらにさらに。
エアコプターも、不必要な機能を削除した状態にすることで、なんと、なんと、最高飛行速度を大幅に向上(最高巡航速度が時速約五十キロメートルになりました)させることができるようになりました!
これはやはり、僕の結界があまりにも多機能かつ高機能過ぎることによる処理落ちが起きていたのが、容量の削減により処理負担が軽くなり、その結果として移動変形速度が向上した、ということなのだと思います。
そして、ここで思い出されるのは、レミカさんが言っていた結界術の真髄、業銘結界のことです。
あれは、あらかじめ容量に余裕を持たせて作成した結界に、別のスキル効果を搭載することで展開することができるものなのですが、
初期量より容量を増やした結界を作るのではなく、無駄を省いて軽量化し、その結果空き容量ができた結界を活用すれば、同じことだといえるわけで、
軽量化結界を自然に活用できるようになれば、僕はまた一歩、結界術の真髄に近づくことができることでしょう。
いやぁ、しかし。
これほど簡単なことに今まで思い至らなかったなんて。
昨日までの僕はよほど焦っていたのでしょうね。
やはりいつでも心に余裕を持っていないと。
それがよく分かりました。
さて、エアコプターの試験飛行(見える範囲でギュンギュン動かしてみて挙動に異常がないかチェックしました)も終わりましたし、目の前まで呼び戻して皆さんに乗ってもらいます。
さぁ、今日も深層目指して頑張りましょう。
ということで、溶岩ぐつぐつのアチアチ空間内を、冷房ガン効き快適エアコプター(外側をソウ兄ちゃんのスキル、燐光水竜操術の水膜で覆っています)でさくさくっと攻略していきましょう。
あ、そうそう。
結界の軽量化に成功したことで、侵蝕結界の無害化にも成功しましたので、
結界での押し合いにめちゃくちゃ強い侵蝕結界を作れるようになりましたよ。
つまりどういうことかというと、
「なぁ、ナナシ。アタシの見間違いじゃなけりゃあ、エネミーどもがこのカベコプターに近づく前に次々ぺちゃんこになっていってねーか?」
と、いうわけです。
無害な結界壁を自在に伸縮密着させてダンジョンエネミーの動きを封じ、瞬間的に威力と強度を高めて圧滅してからドロップ品だけ結界泡で回収してこれます。
少なくとも、時速五十キロメートルで移動するエアコプターの周囲半径二百メートルぐらいに球状の侵蝕結界が広がっており、触れたエネミーを包み込んで潰して倒してドロップ品を回収するところまでをオートで行っています。
あとは、さらに薄く広げている探査結界で次の階層への階段を発見し、そちらに向かって一直線に飛行していけば、
「はい、どんどん進みましょう」
午前中に六十三階層に到達。
夕方には六十五階層を攻略し、六十六階層に到達したのでした。
◇◇◇
「ねぇ、ナナシ。ちょっと良いかな」
夕方、お家に帰ってフェアネス殿下に六十五階層まで攻略したことを伝えると、神妙な面持ちの殿下に、殿下のお部屋に連れ込まれました。
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