第049話・ぐるぐるっと回してアッカンベー


 豪華な甲冑を着た人を捕らえているのと同じ結界球をユーフォーの下面からぽろぽろと落とすと、フジクラ家の城内はあっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図になりました。


「なんだこの球は!?」


「さ、触るな! 取り込まれるぞ!」


「うおおおっ!? 弾みながら転がってくる……、うごっ!?」


 僕が大量投下した結界球は地面に当たると弾力でぼよよーんと弾みながら、ぶつかった人間を中に取り込んで捕まえます。


「弾む方向をよく見て避けるのだ! ……んぐっ!?」


 またひとり、うまくかわしたと思った人が急に動きを変えた結界球に取り込まれました。


 結界球の動きは、自由落下に見せかけて全て僕が半手動セミオート操作していますので、弾む時は近くにいる人を追う方向に跳ねたり、跳ねるかと思いきやいきなり真横に転がったりと、相手の意表を突く動きをさせることができるのです。


 また、結界球は弾んでも弾んでも高さが減衰しないので、一度取り込まれるとゴムボールのようにぼよぼよ弾む結界球の中でめちゃくちゃにシェイクされるハメになります。


 人を閉じ込めた結界球は一定時間動いた後に空中(地上高二十メートルぐらいです)をぷかぷか浮かぶように設定してあるので、人が捕まれば捕まるほどガチャポンカプセルin足軽さん(シークレットレアは豪華甲冑のお侍さん? 武士さん?)が出来上がります。


 ああ、何人かは、なにかしらのスキルを使ったり刀で切りかかったりして脱出しようとしているみたいですが。


 ……まぁ、見ている感じ、脱出は無理そうですね。


 この人たちに、紅ティラノ君やデカクラ君を超える攻撃力があるようには見えませんので。


 たぶん、対人戦闘であれば強いんじゃないかとは思いますが、対ユーフォー戦闘だと火力が全然足りませんね。


 森一帯が消失するような極熱光線とか、軍艦を沈没させるような水圧光線とか、そういうのじゃないと僕の結界を厚くすることすらできませんので。


 とりあえず、結界球に取り込んだ人たちは適度に結界球を回転させてシェイクしたりして、反抗する気力が尽きるまで弄びます。


 あるいは中身が潰れない程度に結界のサイズを大小させてみたり光を遮断して真っ暗にしてみたり、色々してみます。

 

 そうこうしていると、お城の庭部分にいた人たちは皆、結界球に取り込まれたか城内に逃げ込んだかで、姿が見えなくなりました。


 僕は結界マイクに向かって、あらためて喋ります。


「フジクラ家の皆さんこんにちは、キャプテン・ナナシです。お話をする準備が整いましたら、申し出てください。こちらはいくらでも待ちますし、待っている間はここに浮かんだ結界球で遊んでいますので」


 最初に捕らえた、豪華な甲冑姿の人が入った結界球をくるくる回して遊んで(中の人はドラム式洗濯機で洗われるヌイグルミみたいにぐるぐる縦回転しています)みせると、城内から何人かの足軽さんが飛び出してきました。


 やっとお話し合いができるのかな、と思ったのですが、どうにも飛んでくるのは罵声ばかりのようだったのでその人たちも結界球で確保します。


 出てきた人たちの周りに瞬時に結界球を展開して、ぐるぐる回しながら持ち上げてやると、全員目が回って静かになりました。


 それと、お城の窓からこちらをのぞいてきている人たちも何人か首に結界首輪(狩りで獲物の首チョンパするときに使っている結界です)をつけてお城の外に引きずり出し、他の皆と同じように結界球で確保しました。


 うん。

 これで見えるところにいる人は全て捕まえましたね。


 残りの人たちはお城の戸も窓も締め切って、姿を見せなくなりました。


 うーん。

 お城の壁の一部分を薄刃結界で切り取って中が見えるようにしてあげてもいいんですが。


 まぁ、不必要に物を壊すこともないでしょうし、薄刃結界が届くところまで降りていくのも面倒なので。


 僕は再び結界マイクを起動させました。


「あー、あー、ただいまマイクのテスト中、ただいまマイクのテスト中。音量が小さくて聞こえにくかったのでしたら、ごめんなさい。我々は予定通り会談をしにきました。お話し合いの準備ができましたら、教えてください」


 それからふと、思いついて。


「日暮れまで待っても準備が整わないときは、一旦帰って三日後ぐらいにまた来ます。なお、ここに浮かんでいる人たちは会談が終わるまで解放しませんし、中の空気は三日後まで保たないと思いますので、あしからず」


 と、つけ足しました。


 あとはフジクラ家側の反応を待ってみましょう。

 一時間ぐらい待っても動きがなければ、またちょっと脅してみましょうか。


「ハローチェ総帥」


「……なにかしら、キャプテン・ナナシ」


「待っている間ヒマになってもいけませんので、みんなで大富豪でもしませんか?」


 結界製トランプを作成しながら、総帥に具申します。


「…………まぁ、そうね。やりましょうか」


 おや。なにかちょっと、言いたげな表情をされていますね。


「もしかして、別の遊びが良かったですか? それなら僕は、ババ抜きでも七並べでもインディアンポーカーでも、総帥のやりたい種目でいいのですけれども」


 そう言うと、総帥は首を振りました。


「いえ、大富豪でいいわ。ナルさん、ジェニカさん、やりましょう」


 総帥の言葉に二人も頷き、三十分後にフジクラ家の城内から白旗を上げた人が出てくるまで、僕たちは大富豪で遊びました。


 ちなみに、一番多く大富豪になったのはハローチェ総帥で、一番多く大貧民になったのは僕でした。解せぬ。




 そして改めて会談の準備をするので少し待ってほしいと言われ、待っている間は皆でババ抜きをして遊びました。


 ちなみに、ババ抜きでも一番多く負けたのは僕でした。解せぬ……。

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