引き扉

「……」


 開きませんわね。

 いないんですの?

 明かりはついていますのに。


「…………」


 はぁ、仕方ありませんわね。

 ぐっ、と……重いですわ。

 そうでした下僕の巣がある縄張りの蓋と違って、カリカリの食べられる下の縄張りを塞ぐ蓋は重いんでした。


「……」

「……」


 今度は、両前脚でいきますわよ!

 ふんっ。

 そぉい!

 あ、爪を引っ掛けるのを忘れてましたわ。


「……」

「……」

「……」


 なん……で、今日は蓋が少しも開いてないないんですの!?

 爪が、なかなか引っ掛かってくれませんわ!


「……!」


 やっと、引っ掛かりましたわね。

 前脚だけでは少し重くて動きませんので、全身を使って!




 や、やってやりましたわ!

 開きましたわ!

 私の勝ちですわ!!


「[好きな名前を入れてね]、おはよう」


 下僕!?

 いたんですの?!


『いたんなら、開けなさい!』


「[好きな名前を入れてね]ちゃん、挨拶出来ておりこうさんね~」


 せ、世話役まで……見てただけですの?

 信じられませんわ! 私が必死で蓋を……べ、別にこれくらいどうって事ありませんでしたけども。


「動画とっとけばよかった」


 マッサージ機、貴方には期待していませんわ。


 縄張りの蓋を開けるくらい余裕な私はカリカリでもいただくとしましょう。


「あ、寒いから扉閉めといて」

「ほ~い」

「[好きな名前を入れてね]も閉めるとこまでできたら完璧なのにな」


 今日のカリカリはお肉の味じゃありませんのね。

 魚味も嫌いじゃないのでかまいませんけども。

 毎度の事ながら後でつまむように残しておくか、食べきってしまうか悩ましいですわね。


「ほら[好きな名前を入れてね]ちゃん、全部食べちゃってよ」


 よし、残りは後で食べますわ。

 あ~水が新鮮でうめーですわ。


「お、こんな時間か」

「「いってらっしゃい」」

「おう。[好きな名前を入れてね]、いってきます」

 

 まだ寝足りませんわね。

 下僕の巣に戻って寝直し……なんで蓋がしまってますの!?

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