自殺記念日





 この物語はフィクションであり、

あらゆる行為の助長を勧めるものではありません。


 作中に登場する病気に医学的根拠などは存在しません。



スス  「そう、私という悪魔が異世界に呼ばれた日」




☆☆☆




 ー 錬金術同好会 保健室 放課後 ー



 アオイとのカードバトルに勝ち一息ひといきついて

カードを片付けます。


 しかし私も随分カードゲーム脳に侵されていますね。


 2コスで条件付き2エネブースト、

 1枚で3アドのカード、

 召喚時山札から別のカードを呼び出す


 ええ、アオイがいなければこのまま商品化されていたという悲劇。



 「ふぅ、ではウエハースのトップレア・・・

封入率の低いレアカードについての議論に移りましょう」



 「封入率が低いってことは当たりずらいんやろ?

なら ” レイワノショドウ スス伯爵 ”を入れたらええんちゃう?」



 「あれはインフラ、つまり切り札までの橋渡し的なカードですので

ウエハースとは別商品の51枚構築済みデッキに投入予定です」



 アオイの提案も分かる。ただぶっ壊れカードをトップレアにすることは

商品の寿命を短くすることに他ならない。



 「ならば私以外の役員に連絡するか」



 母がそう語りスマホを操作。そしておでこと両肩に取り付けられた

計3台のスマホ画面が起動した。



 「征くぞ! ” A ” ボディガードレッド!!」

 

 「同じく  ” T ” !盗聴レッド!」


 「同じく  ” Ⅽ ” !職場の料理担当!味覚レッド!!」


 「同じく  ” G ” !警備担当!盗撮レッド!!」


 4人 「我ら!伯爵シスターズ!!!!」ドーン!



 「赤やん・・・・全員赤やん!!!!!!!!!!!!!」


 

 アオイ、言いたいことは分かりますが偉い人達なんです。



 「ふむ、ならば追加戦士!!医療担当!嗅覚レッド!!!!!」


 

 4人 「!!!!!!!!!我ら!!!!」きゅぴーん


 5人 「五感シスターズ!!!!!!!」



 アオイ・スス・ニャラケル 「なんか増えたあああああああ!!!」


 

大の大人たちがキメポーズまでしてノリノリですよ!!!



☆☆☆



 皆それぞれ意見を出し合います。


 なぜか私に水着だのコスプレ衣装だのを着させたいようです、

ここまでくると立て直しは難しい。


 アオイや先生に擦り付ける雰囲気ではない。


 

 だが窮地を救ったのはアオイだ。



 「ススはまだ学生!!子供やで!!

よってたかって露出の激しい衣装ばかり提案して!!


 大人として恥ずかしくないんか!!!!!!」



 アオイの一喝いっかつで場を制圧しましたが

代案が無ければ意味がない。


 それでは駄々っ子と同じ。





 「ウチが提案するのは・・・・・・・」







 ごくり






 「園児服を着て哺乳瓶プレイするススや!!!!!」どやぁ


 


 保健室がどよめく、ここに集まったメンバーでアオイはただの学生。


 だが正論を権力で叩き潰す大人などはいない。


 あるのは全力で各種保育園の制服を調べる残念な大人たち。





 「ええ!!!いいでしょう!!!

 商品が売れるのであれば私は着ましょう!!

 

 ですが売れなかった場合はそこの大人共も園児服の刑です!!!」







 数か月後商品が予測を超えるヒットとなり

第2弾のトップレアも私担当となりました♨



 どうしてこうなった!!!!!!!



☆☆☆



 私が園児服を着て哺乳瓶のミルクを堪能していた時

アオイが質問をぶつけました。



 「ススって道徳赤点やけど部下に優しいやろ?

なんでか気になったんや、そしてウチを好きになる理由も」


 

 「どうしても聞きたいですか?アオイを好きになった理由は

先日話した通り同世代で魔法力が桁違いであるから。


 これでこの件はおしまいです」



 「ススにも触れられたくない過去があるんやな。

堪忍な、気分悪くしたなら謝る」



 「・・・・・この話をすればアオイは私に幻滅します。

だから墓場まで持っていくつもりです」



 「ならウチもススと結婚しないわ。


 これ以上に低評価を付けようがないくらいのススに

今更幻滅なんてすることないし。


 秘密を持ったまま友人でいようや」




 アオイには勝てませんね。



 「いいでしょう。すでに母は知っているでしょうが

私はこの惑星の住人ではありません。


 正確には魂が憑依したというべきでしょうか」



 「あ、だから人体錬成とか平気でやるんやな」あっさり



 「超速理解!!!!!結構長いのでアオイの膝枕を要求します。


全ての発端は12年前、ちょうど私が今着ている保育園時代の事です」





 ☆☆☆


 ー ススの過去 ニコラス・スラ―の病 ー



 私の依り代は結論から言えば自殺しました。


 当時の・・・・いえ現在でも治療法が確立されていない ” 自殺病 ”。



 きっかけは私の母の部屋、

学生時代に取ったであろう賞状やトロフィーの山。


 その中には仕事で活躍した賞もありましたが

ある日を境に新しいものは増えていませんでした。



 それが私の・・・・本物のニコラス・スラ―の出産以降。


 育児休暇を取ってから会社での査定が下がり賞を貰えなかった。



 それらを事細かに説明した上で



 「ニコラスちゃんは悪くないの。

ただ仕事でのキャリアを捨ててあなたを生みたかったの」



 こんなセリフを言いながらギュッと抱きしめていました。


 


 ー 数日後 ー



 本物のニコラス・スラーは怪しげな本をもとに魔法陣を書いていました。


 母の部屋に飾られていたトロフィーを見て自分にはできないと、

スラー家の資格がないと勘違いしての凶行。



 「今日があたしの自殺記念日!」



 そういいながら彼女はナイフを自分のお腹に突き立て悪魔を呼び出しました。



 地球と呼ばれる惑星で不本意ながら友人をイジメて不登校にし、

パパ活をし、

転売に手を出し、

娘と自殺した救いのない悪魔を。



 悪魔は彼女の願いを叶えることにしました。


 ただこのままでは出血多量で2人とも死んでしまいます。


 これが黒魔術が成功しない理由。

術者ともども死んでしまえば成功も失敗もありませんので。



 ですが私達は助かりました。


 何でも凄腕の医者が手術をしたそうで。



 彼女の願いは母の子供にふさわしい存在となること、

その為に自分の魂をも投げうってしまったんです。



 確かに他人の優れたところを見て絶望し命を落とすなんて

私達の地球でもよくある話です。


 SNSで自分より華やかな生活をしている人間なんて腐るほどいます。

 


 ですがまだ挑戦すらしていない子供が命を落とす世界に

納得できるほど人間出来ていません。



 私はこの異世界で例え悪と定義されようと

彼女の願いを叶えるため努力すると誓ったのです。





 ☆☆☆



 ー 保健室 ー



 「それがススの過去。

偽名なのもニコラスって子と自分を同一視どういつしさせない為。


 じゃあ道徳赤点なのは?」


 

 「それは私の素の実力。・・・いえニコラスと私の魂が交じり合った結果

道徳力が欠如したというか・・・・そういうことです」



 「にゃひひひ、さらっと設定を盛らない」


 

 ニャラケルのせいで誤魔化せなかったじゃないですか!!!



 「私は王都に住まう全ての民を救済できる神ではありません。


 伯爵財閥の利益で関係者のみはお金に困ることはしないように

努力はしています。



 経済特区として治外法権を行使できるところまでは来ました」



 「それはニコラスさんの為?それともススの願い?」



 「きひひひひひ、魂が交じり合った今それを知る者はいません。


どうです?アオイこれで満足しましたか?」



 突き放したかのような発言にアオイは答えます。





 「せやけどスス、ずっと園児服着て膝枕で哺乳瓶プレイのまま

過去回想してもシリアス展開にはならないんやで?



 「・・・・・自殺します。探さないでください」



 役員と先生、ニャラケルにアオイに全力で止められ

今日も明日も生きていくこととなりました。



 前世の私も本物のニコラスも

相談する相手がいれば違った結末を描いていたかもしれませんね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る