人体錬成
これが私の最終結論。
0から人間を作り出すロマンは魅力的。
ですが仕事をやらせるなら機械のほうがいいし、
人格を植え付ければ”ニンゲン”と同じく肉体労働を拒否しだす。
言語や法律を新たに教え直す時間的コスト、
子供ならば成人に育てるまでの親のストレス、
人口爆発による食料難。
他にも様々な問題があります。
きひひひひ。馬鹿な客が釣れましたね。
当然スポンサーにはメリットしか伝えていませんよ?
それが営業の使命であり怠惰。
責任を取るのは偉い人ですから。
・・・・もっとも帆帝夫妻は会社からしてみれば捨て駒。
利益を得たら捨てられるのがオチでしょう。
☆☆☆
ー 私立ポルタメント女学院学生寮 アオイの部屋 ー
私立なだけあり1人1部屋与えられるが、学生会メンバーは別室。
一般生徒より少し広い。
なにより個人用シャワールームが魅力的・・・・
だというのに伯爵と生活するとなるとスペースが足りない気がする。
「誠に不本意ながらここがワタクシの部屋です」
「おじゃまし・・・・ヴェッ!!!!!」
伯爵が目を背けました。いったい何が不満なんでしょう?
「あの椅子に掛けられたものは何です!!!」
「昨日のワタクシのタイツですが」
「じゃあ机のカップ麺の容器は!!」
「お夜食です」
「靴から変なにおいするけど洗ったのいつ!!!!」
「失敬な。毎日消臭スプレー使ってます」
「この女子力皆無が!!!!!!!!!」
「ひいいいいいい」
伯爵は次々とワタクシの部屋を漁ります。無許可で。
「何ですか!!洗濯物は入れっぱなしで!このままじゃカビますよ!!」
「それと埃っぽい!!!まず掃除から!!!!」
「えあああああああ!!!なんで賞味期限3か月前のパンがあるんです」
「というか今動いた黒いのって・・・・・」
答えるまでもない。スリッパをはき即座に踏みつぶします。
神速の域で相手の息の根を止めました。
「何のことでしょう?おーほっほっほっほ」
「キャラ崩壊してますよ、ゴミ屋敷の姫様」ドン引き
ワタクシの足癖の悪さは彼らとの戦いの歴史でもありますから。
「はぁ、予定変更です。まずは掃除からですね。
帆帝家はどんな教育してるんだか」
「そんなのお手伝いさんに任せます。お金がありますので」
「今はいないでしょう!!!」
「お手伝いさんこの学園卒業してしまいましたから。
ちょうど先輩でしたので」
「そりゃ逃げたくなります!!!!!
表では才色兼備なふりして!!この人!家事出来ない!!!
だから私が住むと言ったとき両親泣いて喜んでいたんですね♪」
「さらっと両親もワタクシの事馬鹿にしてますね」
「事実ですから」
人でなしですね。両親も伯爵も。
「とりあえず掃除しますから。まずはスリッパを奇麗にしてください」
「頑張ってくださいな」ポテチバリバリ
「そこで立ち食いしてるヒューマン!!!あなたもです!!!」
「ひえええええ」
情けない声が出ましたが正直怖かった。
何とか協力して2人分の布団が敷けるぐらいのスペースは確保した。
ー アオイの過去回想 私立ポルタメント女学院 7月 ー
この学園の文化祭は他より早い。
様々な理由が思い浮かぶが受験前の2年生に対し早めに遊ばせて勉学に
集中させるのが目的だろうか。
だが今年の文化祭は
全額伯爵持ちで開催するというのだ。
当然学生会メンバーの中抜きの場であったため反対意見も出た。
しかし有名アニメ”ボルタスV”の歌手を呼ぶと分かると事態が好転。
2世代前の国王の名前は忘れたがこのアニメの主人公は覚えている人が多数。
視聴率は驚異の50%以上、まさに国民的人気アニメ。
個人の金もうけの思想など”ボルタスハラスメント”通称”ボルハラ”に
鎮圧された。
☆☆☆
ー 文化祭 学生会室 打ち上げ ー
「皆様の努力と!伯爵様の資金力に!乾杯!!!!」
「「「「「乾杯」」」」」
結論から言えば文化祭は大成功。
伯爵の資金でお菓子やらジュースのペットボトルやらが並んだ学生会室。
奇跡的に現メンバーからは不正な資金の流れは見えない。
ワタクシと伯爵のダブルチェックからは逃げられないし
小賢しい横領よりも伯爵と一緒にいたほうが”おこぼれ”を預かれるから。
一般生徒も例外ではなく、
食事や”ボルタスV”のライブを全て無料で楽しめた。
そうここまでは華やかな学園生活。
代償は全部ワタクシに降り注ぎます。
☆☆☆
ー 8月 アオイの部屋 ー
「そういえばさ、伯爵の資金源ってやっぱ学園運営?」
「それもありますが大口のスポンサーから学生の皆様まで様々ですよ」
伯爵とワタクシを隔てる壁は少なくなっていた。
言葉も他人を威圧したりあざ笑うかのような口調ではない。
「例えば靴の接着剤と気化装置セット。
この学園も含めて・・・・未成年に流行中です」
「確かに学生って靴すり減るからね」
「いえ、接着剤に含まれるアルコールを加熱して
取り出す手段をまとめた商品です」
「未成年飲酒!!!」
「いえいえ、私はアイデアと商品を売っただけです。
勝手に購入者が試しただけ。きひひひひ」
「この詐欺師!!!少なくともこの学園での販売は禁止で!!!」
油断も隙もない!!!
「では近いうちに違法指定行きの気持ちよくなるハーブならどうです?」
「学生会長権限で全部燃やしましょうかぁ!!!!!!」
「ダメですよぉ、そんなことをしたら。
これには教師も夢中なんです。
特権はあくまで”与えられて”いるものですから。
反抗すると取り上げられますよ。きひひひ」
「もうこの学園腐敗しすぎてダメかもしれない!!!」
「本当に賢い人は学生会なんかには入りませんよ。
だって全員救いが無いんですから。きひひひひひひ」
「あのさあのさ、もしかしてワタクシって馬鹿なのですか?」
「・・・・・」ぷいっ
「目を背けないで!!!!お願いだから!!!!!」
伯爵の首根っこを掴みぐわんぐわんと揺らしても反応がない!!!!
「落ち着いてください。まったく。どこまで純粋培養で育ってるんですか。
いえ学生は勉強をするものですからこれが正しい姿なのは分かります。
けれど大人の世界は常に足の引っ張り合い。
利益の為に他者の利益を奪うゼロサムゲーム。
社会人になる前にバイトするのがおすすめです。
いかに他人を安く使うかで社会の闇が見えますから」
「でもワタクシは会社の後を継ぐんです。
学生稼業もその一環」
「そうですね。あくまで”血の繋がり”があった場合の話です。
他人ならばせいぜい適当な役職を与えてサービス残業させるでしょうね。
帆帝さんって
掃除も
料理も
対人のコミュニケーションも落第点ですから、きひひひひひ」
「さ、流石にいい所もあるはずです・・・・・・よね?」
「ええ、魔法の才能が有ります。
けれどそれは社会人にとっては不要な物。
あれば便利ですが実力よりも上に媚を売ったり、中抜きをするほうが効率的。
はっきり言えば帆帝さん以外の学生会メンバーのほうが優秀です」
「遺書の書き方ってご存じですか?」
「まあ落ち着いてくださいな。
汗水たらして働くよりも頭脳労働のほうが稼げるということです。
よかったですね。学生時代にこの世界の真実に1歩近づけたんですよ。
これから勉強なり頑張っていい学歴を貰ってください」
「練炭って購買売ってたっけ?」
「思ったより深刻ですね。
そういえば文化祭の資金の出どころ気になりますよね?
あれ”人体錬成”ていう、材料となる素材を入れて人間の遺伝子・・・・
例えば髪の毛を入れて人間を創る特許を売ったんです。
あなたのご両親に」
「ロープなら確かこの変に・・・母上たちに!!!!」
「ええ。人間を量産できれば働き手が増えますし、
とりあえず優秀な個体を選んで後は廃棄すればいいだけですので」
「なんか怖そう」
「ええ、その考えが正常です。ただご両親は金儲けに走ってしまいました。
人体錬成マシーンを量産し各国で絶賛稼働中です。
そして得た資金で私に取引を持ち出しました」
「取引?」
「新たな”帆帝アオイ”の製作依頼です。
魔法エネルギー貯蔵量のパラメーターを学力等に振ったんです。
つまり社会人対応型の帆帝さんを正式な娘にして、
今までの帆帝さんは私に上げるという契約を」
「ええと意味が分からないんだけど?」
「簡単に言えばあなたは捨てられたんです。
そして私に拾われた。ただそれだけの話」
「え?捨てられたって・・・・・」
「別に珍しい話ではありません。
親としては自分の子供が優秀であればあるほど、他の人間へ自慢できるんです。
承認欲求ってやつですよ。
それを利用したまでの事。
もしくじ引きのように”引き直し”が出来たり、
中身自体を全部”あたり”にできたら?
この学園の不正と同じことが国全域で行われているんですよ。
自分たちの利益の為に。きひひひ」
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