厄日のクラゲ
今日は厄日だ。きっとカレンダーには仏滅と書いてあるだろうし、星座占いも最下位だったろう。見てはいないがわかる。
傘の内側に空気が入ってしまい、沈めなくなった俺はぷかぷかと水面を漂っている。こうなると、もう自力で海の中に戻ることは出来ない。俺の一生はこんなところで終わってしまうのか。こんな優雅さも幻想感も無い最期は嫌だ。打ちひしがれ波にされるがまま揺られていると、海中の触手をツンツンとつつかれる。
「なんだか愉快なことになっているねぇ」
「……。お前を消す方法」
「酷いなぁ」
イライラが最高潮に達した俺は目の前に現れたイルカを罵る。酷いのはどっちだ。そもそもこうなったのはお前が吐き出した気泡のせいじゃないか。イルカは俺の悪口に怯むでも落ち込むでもなく飄々としている。そして鼻先で優しく俺をひっくり返した。
「助かった、ありがとう」と言い終わる前にまた鼻先でつつかれる。そうして俺は暫くイルカの遊び相手になるのだった。やっぱり今日は厄日だ。
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