第1話鬼は鬼でも…
泣いた赤鬼という話に出てくる青鬼に、小学生の頃憧れた。クラスの発表会で青鬼役をやるにあたって原作を読み込んで自己犠牲の精神に感動した。以後、何が貰えるわけでは無いが、人の役に立つことをしようと決意した。
月日が流れ高校一年春。ここ、私立群青高校に入った俺は沢山の人を助ける代わりに犠牲にしたのは友人関係だった。もちろん0人では無く数人は居るが必要最低限とゆうやつだ。
クラスに一人は居る、何考えてるか分んない奴。そんな人が居たらあなたはどうしますか?
1話しかける
2そっとしておく
大半の人間は後者を選択するだろう。だって何考えてるかわからん奴に話かけるなら、本を読んだりゲームをしたり友達と談笑したりしたほうが何倍も楽しいし安全だ。
さて、何故こんな話をしたかはわかるだろ?現在進行形でそうなってるのが…俺だ。
自己紹介が遅れたが俺の名前は鬼島怪斗(きじまかいと)身長199cm、体重60㎏見るからにひょろくてデカい。まるで青鬼の様だろ?髪の色なんて茶色混じりの黒髪ワンサイド。傍から見れば少し怖いイメージがあるかもしれない。でもこの髪型は愛しの我が妹の頼みだから断れない。しかし世間から見てこんなのが髪で目元隠していたらどうだろうか?とても話しかけていい雰囲気ではない。そう、犠牲にして得た対価は青鬼としての看板、ではなく怪物のレッテルだった。周りの奴らは俺を怪物扱いしてるらしい。でも心はホントの青鬼の様に振舞っているつもりだ。部活は奉仕活動部だし、困っている人が日常で居たら話しかけて、助けたりするもんだ。部員は俺含めて2人。部長は俺の本性を知ってるから居心地のいい場所になりつつある。最初はものすごく怖がられていたが活動を経て理解されたので助かっている。
「おはよう。今日も相変わらず不気味でかっこいいわね」
そう話しかけて来たのは先程話した部長、名は真城琴音(しんじょうことね)先輩。黒髪ロングで体型もスラッとしており全校で人気の人。成績は2年ではトップ。生徒会長と奉仕部を兼任してるすごい人。噂だと毒舌だけど親切だとか、好きな人が居るとか、結構なツンデレとか。まぁどれも信憑性が無いのでわからないし深く他人と関わる機会は無いのでどうでもいい事である。
「あの、それは褒めてるんですか?貶してるんですか?」
「あら?私は褒めたつもりだけど不服かしら?」
褒めたつもりなのかよ。
「褒めるならちゃんと言ってください。罵倒が入ったら意味無いでしょう?」
「あら、ごめんなさいね(笑)」
謝られてる気がしないがこの人はこんな俺なんかに話しかけてくれるのでこの先輩は大事にしたい。
「ところで何か様ですか?」
「えぇ。今日は活動が無い日だけど私が仕事を見つけて来たわよ。頭を垂れて感謝して私に同行するのを許すわ」
ヤベェなこの人。さっきより棘多めで返してきやがった。...大切にしようと思ったけど一考の余地があるかもしれない。
「分かりました。時間は放課後で大丈夫ですかね?」
「えぇ。物分りのいい子で助かるわ。では失礼するわね。読書の邪魔して悪かったわね」
「いえ、お気になさらず。ありがとうごさいました」
そう言って先輩は教室を出ていく。相変わらずキビキビ動く人だと思う。見習いたいものだ。でもこの体格で早く動くと子供に泣かれるのでゆっくり動かなきゃ行けないので悩みの種でもある。
昼休み。
「こんにちは」
「...放課後で会うのにまた何か様ですか?先輩」
「ぼっちな貴方に施しをあげようというのにその態度は何?犬の方がまだ賢いわよ?」
「で、何の様ですか?(無視)」
「お昼、一緒にどうかしら?」
その一言でクラスがざわめいた。あの怪物に話しかけるとか勇気あるなー。とか何とか言われるが別に気にしない。
「それだと先輩のイメージが下がりますよ?」
「私は他人の視線などノミレベルで気にしてないもの。私は貴方と話がしたく、お弁当を食べたいので貴方に話しかけているの。ちなみに拒否権はありません。前失礼しますね」
そう言って本当に俺の前に椅子を持ってきて座りやがった。強引だな。
「さて、何を話したものかしらね。話題なんてないわね」
あんた話題無しで来たのかよ。
「そうね...友達は出来た?」
「友達できてたら先輩と弁当なんて食べてませんよ」
「それもそうね(笑)。ごめんなさいね、野暮な事聞いて」
「気にしてないので大丈夫ですよ」
「あらそう。少しは気にしてるものだと思っていたけど、よかったわ。これで貴方が傷ついたら私が悪者みたいじゃない」
少しは気にしているが先輩に気を使わせるのは申し訳ないので黙っている事にした。
「そういえば、今日の活動は何をするのですか?」
「それは放課後のお楽しみよ。貴方は待ての出来る子だと信じていたのにガッツいて聞いてくるなんて、失望だわ」
あんた俺をなんだと思ってるんだ。俺だって人間なんだぞ。流石に言い過ぎなので少し反撃しようと思った。
「お言葉ですが先輩、俺は人間です。そんな事言う先輩とはもう口聞いてあげません」
よく親が子供に対して使う口上をそのまま使う。俺は子供の喧嘩を結構目にするのでこう言った言葉を使う子を何度か見た。というか俺には妹が居て天使のように可愛いので叱れる訳もなく、怒ったことが無いので何を言っていいか分からず結局こんなセリフになってしまった。さて、反応はどうかなと思い目を開けたら先輩がうる目になっていた。
「せ、先輩!?大丈夫ですか!?!?」
「な、なんて酷いことを言うの。べ、別に貴方と口を聞かなくてもいいです!私には友達が居ますので!」
そう言って涙声かつ早口でそんな事を言う先輩。まさかここまでの反応をされるとは思ってなかったので少し驚く。たかが後輩の返事にここまでなるとは。少し反省する。
「嘘です先輩。俺先輩が好きなのでむしろ俺が先輩に捨てられたら悲しいので暫くは相手してくれると助かります」
そう言ったらものすごい勢いで顔を上げて
「い、今の言葉はホント!?ホントに私の事が好きなの!?」
「えぇ好きですよ。先輩は頼りになる良い先輩です!」
そう返事をしたら頭を下げブツブツと何かを言い出した。俺はあまり耳が良くないのでよく聞こえなかったので、なんですか。と聞いたら、なんでも無い。と少し頬を膨らませてそっぽ向いてしまった。
そんな毒舌含めた会話をしながら昼飯を食べていたらもう昼休みが終わろうとしていた。
「ご馳走様。では、放課後に。失礼しますね」
そう言って先輩は去っていく。去っていくのを見送って教室に入ると声を掛けられた。
「ねぇねぇ!怪物君!君、真城先輩と付き合ってるの!?」
そう声を掛けてきたのは運動神経抜群のクラスの太陽ポジション、いつも元気で笑顔が絶えないこの子の名は朔夜陽菜(さくやひな)。クラスのリーダー的存在で茶髪で少し金髪も混じったサイドテールが似合う俺とは正反対で太陽のような女性だ。こんなぼっちにも笑顔を向けてくれる好感の持てる人だと思う。
「そんな訳がありません。俺が先輩と付き合うなどおこがましいにも程があります。先輩にはもっと素敵な人が居ますよ」
俺は恋バナが得意では無いのでそうそうにこの話を終わらせたく少し早口で言い席に着いて本を読もうとしたが、
「ほんとに〜?先輩は実は君が好きかも知れないんだよ?」
そう言ってまだ話を振ってくる。この人は少し遠慮を知った方が良いかもしれないと思う。
「で、どう!付き合いたいとか思わないの!」
「確かに先輩はルックスは良いですし目を引く容姿をしていますが先程申した通り俺なんかとは釣り合わないので。こう言った話はあまりして欲しくないので今後はやめてください」
そう言い切り読書を再開する。周りは今の言い方は無いだろとかザワついているが
「ごめんね怪物君!もうしないよ。じゃーね!」
朔夜さんは席を離れザワついている方に気にしてないよ!と、声をかけまるで最初から話していないような空気になった。あぁそうか。これは彼女に利用されたのかと少し思う。リーダー的存在と言っても自分の地位を築きたい人なのかもしれない。好感が持てる人と思ったが人は見た目に寄らないらしい。今後は関わりたくない人種だな。まぁ、困っていたら多分助けてしまうだろうが...
放課後。
「時間通りに来ないとは...私を舐めているのかしら?」
「そんな事ないです先輩。まずは話し合いをしましょう。人間は話し合いができる種族です」
「話し合い?言い訳を述べるの間違いじゃ無くて??」
「先生に話しかけたら予想外の量返されて話し込んでしまっていただけです」
「そ。ならいいわ。でも、もし遅れた理由が女絡みだったら...貴方を殺していたわ。」
フフフと不気味な笑い声でこちらを睨んでくる。おっかない先輩だ...
「実を言うと女性がらm」
言い切る前に手刀が眼前で寸止めになった。何この人情緒不安定過ぎない!?
「ハ?アナタナニヲシテイタノ?」
「誤解しないで欲しいのですがうちの担任の駒ちゃん先生です」
どうやら少し前の合コンでもいい男の人が居なくて嘆いたのを見かけ声を掛けたらすごい愚痴のオンパレードで中々離してくれ無かったために遅れたのである。その旨を説明したら
「ごめんなさい。早とちりだったわ。でも別の女とだったなら今頃片目は私の胃の中ね。命拾いしたわね」
今この人ナチュラルに目玉抉ってそれを飲んだって言った?ホントにこの人との関係について今度妹と議論しよう...
「で、本題に入りたいのですが今日は何をやる予定なのですか?」
「よくぞ聞いてくれたわ。私が持ってきた仕事は...学校の草むしりよ!!」
しょぼかった。想像の5倍はしょぼい内容で少し間が抜ける。
「何か言いたそうな目ね。言ってご覧なさいな?」
「いえ、なんでも無いです。始めましょうか。」
そう早口で捲し立てそうそうに作業を開始した。
始めて思ったのが...仕事が殆ど無かった。どうやら昼の間に係の人が掃除をしてしまったらしい。
「 」
先輩も絶句である。恐らくプライドの高い彼女の事だ。後輩にいい顔をしたかったのであろう。ここは後輩らしく先輩をヨイショしなければ。
「いやー先輩のお陰ですぐ終わりましたね!やはり先輩は頼りになりますね!流石生徒会長と言うべきでしょう!」
そう声を掛けたがどうやら聞こえていないらしく
「せっかく後輩と2人きりで作業が出来ると思ったのに...」
と、何か顔を俯かせブツブツと言っている。分からん。先輩は仕事がしたかったのだろうか。そう思っていたら勢いよく顔を上げ、
「掃除をしたのは誰?血祭りに上げてやるわ!!」
すごい声量で事務室に向かおうとする先輩をすぐさま羽交い締めにして止めに入る。
「まぁ、いいじゃないですか先輩。掃除してくれた人に感謝こそすれ恨みを吐いてはいけませんよ。」
ニコッと俺最大限の笑顔で応えて見せた。前にこの顔を子供の前でやったら泣かれたが先輩なら大丈夫だろう。
「〜〜!!!!」
顔を赤くして先輩が拘束から逃れてそっぽ向く。
「すみません先輩。少し強く締めすぎました。体は大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だから!!そもそも今日は部活無いのだから貴方はもう帰りなさい!ていうか帰れ!!」
そう言ってグイグイ人を押す。貴方が俺を誘ったんですよね?まぁ、いいですけど。
「では失礼しますね。先輩、また明日。」
そう言って俺は帰宅した。にしても最後の先輩が気になる。顔が赤くなっていたが大丈夫だろうか?
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