パジャマパーティ

朝凪 凜

第1話

「よーし! 恋バナしよっ!」

 夕食後、おのおのが集まって、十代の子達がパジャマパーティをしていた。

「えーもー寝ようよー」

 ほおを膨らませて枕に顔をうずめる。

「サキちゃんが話したいなら私は聞いてるよ」

 うつ伏せになって頬杖をつきながらニコニコと笑う。

「あたしの話じゃないの! 未来みくとひなたの話を聞きたいのっ!」

 布団に座って二人を促す。

「私は未来ちゃんの話でもいいよ」

 体を未来の方に向け、しっかり聞く体制になっているひなた。

「えー? 恋バナなんて無いよー? 女バスにそんなことしてる暇なんてないしー」

 枕を首元まで下げて、それでも頭は突っ伏したまま話す。

 今回はサキの家に3人でお泊まり会をしていた。ちょくちょくローテーションしながらみんなの家に泊まったり、たまに一人二人増えたりして高校生活を謳歌している。

「でもほら、男バスと一緒に練習したりしてるでしょ? その中で気になるひととかいるでしょ。絶対いる!」

「サキちゃん、よく見てるもんね。バトン部そっちのけで」

「えー? うーん……いないよー? 男バスってなんかみんな怖いしー」

「未来がバスケやるっていうのが未だに信じられないけど、あたしは。普段あんだけぼーっとしてるのになんで運動部にいるのか分からないわ」

「サキちゃんは運動部っぽいのにね」

「バトンは運動部だよー、死ぬほど疲れるんだから」

「瞬発力と持久力が必要な部の未来に死ぬほど疲れるって言われたくないわよっ!」

「でもそんな大変なサキちゃんが恋バナするくらいには好きな人がいるってことでしょ?」

「そりゃあ、好きな人の一人や二人や三人くらいはいるに決まってるじゃない! 二人だって居るでしょ?」

「ちょっとひなたー、せっかく話が逸れたのになんで恋バナに戻しちゃうかなー」

「私はみんなと居る方がいいからそういうの別に要らないし、話振られても話すことは無いから大丈夫」

「はいじゃあ未来の話を聞かせてっ!」

「えー? だからうちはそんなの無いって――」

「けーくん」

 ぼそりとつぶやいたひなたにものすごい勢いで顔を上げる未来。

「けーくん? まさか神楽桂?」

 うっ、と眉をしかめる未来。

「なによー、悪いー?」

「いや、なんていうか、そっち系なのね未来って」

「そっち系ってゆーな! むさ苦しい男は嫌いなの! ひなたはもう……。

 そうだよー、けーくんはなんていうか可愛いし、天然なところが面白いし、みんなからも好かれてるでしょー?」

「……そうね……主にかわいいマスコットとして……」

 高校生男子の中でも背が150cmほどで、童顔タレ目でいつもニコニコとして、クラスの愛されキャラとなっている。

「でも、それだけじゃ無いでしょ? 未来とはあんまり話してるところ見たこと無いけど」

「無いよー? だってかわいいものは遠くから見ていたいじゃないー? 触ったら溶けて無くなっちゃいそうー」

「無くなっちゃうって、人をアイスみたいにねぇ」

「いいのいいのー、ほらー、うちも話したんだし、サキちゃんの話も聞かせてー」

 そんな話を日が変わっても続けていた。


 *  *  *


 翌朝。

「サキ。未来ちゃんまだ寝てるけど、起こす?」

「ううん、もうちょっと待ってて、もうちょっとしたら面白いことになるから」

「?」

 ひなたが首をかしげながら、スマホをいじってるサキをぼーっと眺める。

 パシャ!

 サキが持ったスマホで未来の写真を撮った。

「よし、これでOK! 起こしていいわ」

「?」

 とりあえず未来の体を揺すって起こす。

「んあー……もう朝ー……?」

 寝起きの未来が起きたと思ったら布団にくるまってうずくまった。

「未来ー。はい、電話」

 寝ぼけ眼のままサキの手から持たされたスマホを手に取る。

「んー? もしもしー、どちらさんー?」

『おはよー、未来さん』

「!?!?!?」

『もしもーし』

「え、何、桂くん?」

『さっきサキから写真送ってもらったの見たよ』

「写真ー?」

 横でサキがニコニコしている。ひなたは気の毒そうな顔をしている。

『寝顔かわいいね』

「!?!?!?」

 寝ぼけた顔に火が灯ったかのように熱くなった。

「ちょっとサキー! なんで勝手に人の写真撮ってるのー!」

 すぐにスマホの通話を切ってサキに文句を言った。

「まあまあ、ほらちょっとしたサプライズよ」

 その日の未来はずっと膨れたままだったけれど、それはそれで可愛く見えた。

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パジャマパーティ 朝凪 凜 @rin7n

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