第20話
町にポーションを売りに行ったのは気付かれなかったが、それは親にだけで、勘の良いハクにはばれてしまった。
ハクは何故か木剣が入れ替わったり、使っている物を新品と取り換えても気付かないのに、俺が秘密にしていることにはいち早く気付くのだ。
そのことで機嫌が悪いらしく、模擬戦中はやけに荒っぽく剣で打ってくる。
「シィッ!!」
大きな横薙ぎを受け流し、カウンターを入れようとするも、何故かそれよりもはるかに速い剣戟が反対側から飛んで来る。
『おめぇは割と鈍感なんだな。』
『ノア君は女心が分かって無いんだよ。』
いや、分かっているつもりではある。
だが、それはあくまで子供心。
将来的には俺に見向きもしなくなるだろうし、今の内から慣れておくだけだ。
幼少期の友達という立場なら、今後ハクに恋人ができても気まずくはならないだろう。
『重傷だなぁ。』
「ん?ばっ!?」
小さく聞こえたマキの声に反応していると、真下から打ち払われた木剣に俺の剣ごと顎を打ち上げられた。
「『オートモード』」
気絶を感じた俺は、そのまま気絶した状態で動けるように、自動で身体を動かす魔法を使った。
ハクの心配する様な目を見つめ返しながら、
アーモンドの香りを感じて、俺の意識は闇へと落ちた。
◇◆◇
目が覚めると、俺の両脚はちゃんと地面について立っていた。
前を見ると、肩で息をしたハクが、楽しそうに笑いながら切りかかってきた。
まだ意識がハッキリとしていないものの、『オートモード』の効果があったようで、腕が勝手に振り上げられる。
およそ同じ威力の打ち合いだったのだろう、両者は綺麗に弾かれあい、それを皮きりにハクの切り込みは更に強くなる。
数回の打ち込みの末、加速が
ガガガガガガッ!!
普段の俺の受け流し主体の剣とは違い、明らかに魔力にモノを言わせた乱雑な剣だ。
だが、動きに身体が疲れる事も、衝撃に手が痛くなる事も無い。
このまま続けていても良いのだが、それじゃ面白くない。
ハクから大きな上段の振り下ろしを喰らう。
その瞬間、『オートモード』を解除して腕から力を抜く。
予想した手応えが無く、数瞬ほど意識が飛んだ隙を突き、柄を使って鳩尾を突く。
呼吸困難を起こしたハクはそのまま気絶し、その場に倒れ込む。
俺もそれに倣って倒れ込む。
魔力も体力もギリギリだった。
だが、これくらいなら毎日やっているから気にならない。
日に日に強くなるハクにギリギリで追い付いている気分だ。
全く、周りが強いと俺も頑張らないとな。
『まだまだ眠ってられねぇな。』
『頑張ってね♡』
二人の激励を聞きながら再度意識を手放した。
◇◆◇
数日程、平和な日が続いた。
今日も、ギルドへと『美味いポーション』を売る為に遠出をしている。
金は溜まり続けているが、今日は少し特別な様だ。
「Bランクパーティ?」
「そう、Bランクの彼女等に君のポーションが大好評でね、女性だけで構成されているパーティだったから、わりとこだわりの強い面々なんだが、どうだい?会ってみたいとは思わないかな?」
「新しい商品を売り込む為に?」
「まあ、そうだな。男の子の君に女性が好む様な物を作るのは難しいかもしれないが、どうだろう?」
ふむ、当てが無い訳じゃない。
『癒善草』のポーションだけを俺の収入源とするつもりは無いから、色々な薬草からポーションを作ってはいる。
だが、確実にウケる物かというと確証は無い。
「女性であるギルマスが気に入れば、その方々も気に入る確率は上がるだろうか?」
「そうだね。私もこんな役職ではあるものの、一人の年若い女性だ。きっと彼女等と好みは合うだろう。」
ふむ、そうなると、いくつかの候補は絞れるか。
「じゃあ、少しサンプルを見せるから付き合ってくれるか?」
「ああ、良いだろう。」
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