コンペティション・オブ・Q
最上 虎々
プロローグ
不思議な子供達と思い出話
僕の名前は「
そんな普通のジャーナリストな僕には、少々変わった過去がある。
……僕は七歳の頃、とにかく真っ白な内装の施設で数日間を過ごした事がある。
「うえっ。おれ、これニガテー!」
「もう、好き嫌いはいけないのよ!」
「うるせーババア!」
「ばばあじゃないもん!まだ6さいだもん!」
食堂はとても騒がしかった。
騒ぐ子供の声を聞くと、「ここは僕にはあまり合わない場所だ」と思いながら一人で夕食を食べていた時のことを思い出す。
だがそんな僕にも、仲の良い友人の一人くらいはできた。
「ねえ、ご飯……食べないの?」
「うーん、あんまりお腹減ってないや」
「ちゃんと食べないと、強くなれないよ?」
「強くなれなくてもいいよ」
「だーめ!私達はすごい人達なんだから!せっかくすごいんだから、もっとすごくなれるように、まずはいっぱい食べるところから初めよっ!ね、環くん!」
「ええー……」
いつも一人の僕を気にかけてくれていたのか、よく話してくれていた「いい人」……であり、僕にとって唯一の友人。
その女の子の名前は「
僕の人生で、今のところ彼女を超える程に心を許せた人間には出会ったことは無い。
しかし高校三年生の十月以降、彼女との連絡はついていない。
特に揉めた訳ではないのだが、気が付いたら彼女はいなくなっていたのだ。
ただ、今は彼女が無事に生きていることを祈るばかりである。
尤も、彼女に限ってはちょっとやそっとのことで死ぬなどあり得ない訳で……だから、あまり心配する必要は無いだろう。
何故なら彼女は、
「【
「わあっ!?……ひ、久しぶり……変わらないね、麗奈ちゃんは」
……文字通り「電波に乗って」移動することができる、「
「うん。本当に……久しぶりだね」
あれから十年。
僕も麗奈ちゃんも、今や二十八歳。
お互いに、容姿はあの頃からかなり変わっている。
高校生だった時はまだ幼気が残っていた麗奈ちゃんも、スラっとしたラインのすっかり大人のお姉さんといった具合に成長していた。
「……元気だった?」
「ぼちぼちかな」
「そっか。……でも、とりあえず普通に生活できてるみたいで良かった!しばらく会わない間に話したいことがいっぱいできちゃって……」
「……洒落にならないことを言うね。まあ、その……とりあえず、靴を脱いでもらいたいんだけど」
屋外から飛んで来たのだろう。
麗奈ちゃんは今、僕の家に土足のまま上がり込んできている。
「あっ、ごめん!今脱いでくるね」
しっかり者ではつらつとした、いかにも優等生気質な彼女だが、時々抜けているのもまた彼女らしい。
その後。
僕と麗奈ちゃんは改めて再会を喜び、近況報告と思い出話に花を咲かせた。
特に思い出話の方は、話し終わるまでに丸々一晩はかかっていた筈だ。
……あれは十年前。
僕と麗奈ちゃんが同じ高校に通っていた頃に巻き込まれた事件の話である。
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