最近仲良くなった女友達の距離感がおかしい

ホオジロ夜月

プロローグ 距離感おかしくない?

 時期は七月。蝉もうるさく鳴り出す季節になり、今日は夏休みの課題である読書感想文に使う本を探すためにわざわざ学校の図書室に来ていた。 

「ち、ちょっと近くない?加藤さん」

 「そう……なの?友達ってこれぐらいの距離感じゃないの?」

 そう言いながら変わらず加藤さんは距離を詰める。

 ちなみに課題用の本は見つけ、後は涼しくなる夕方まで待つ傍らで、僕らは一つのスマホで動物の癒やし系動画を見ていた。

 とはいえ……だ。

「友達とは言っても距離が近すぎるのはどうかと思う……」

 今も動画を一緒に視聴してる体勢も肩が触れ合うどころか、もうお互いの肩がミリ単位でピッタリくっついている。

 おまけに彼女の少しだけ花のように柔らかな香りが花をくすぐる。

 いい匂い……ってこれじゃあ僕はただの変態なんじゃ……。

 

 多分彼女の言う『友達』の概念異性同士の友情的な考えなんだろう。

 たまにこういう行動を僕に見せるから急にドキッとする。

 そこで不意にある小説のタイトルが目に入る。

『こんなに近くにいるのに何も思ってないなんて恋以外ありえない!』 

 見るからにラブコメかつ、甘々系のラノベなのがタイトルから非常に伝わってくる。

 僕もこういう恋。してみたいな……

 加藤さんはどうなんだろう……

「どうしたの? ぼーっとして」

 そう思案していると横から加藤さんが顔を覗かせる。

「わわ。別になんでもないよ」 

 

 つくづくこの状況がラブコメみたいだなとこの時隼人は浮かれてしまう。

 あぁ……女子と二人でこんな時間を過ごすことになるとは、昔の僕からすれば思いもしなかったな……

「本当に……?」

「本当本当! というか加藤さんって誰にでもこの距離感なの?」

「えっ……こういうことするの中村君だけだよ?」

「えっ、それって……」

 彼女の不意に出されたその言葉に自然とあらゆる可能性を考えてしまう。

「……もうこの話は辞めよう! ほら、外も夕方だし、涼しそうだよ?」

 美結は少し気恥ずかしそうに笑いながら会話を終わらせた。

 この時、僕に向けている加藤さんの笑顔を見て出会ったばかり頃の3ヶ月前の日々を思い出す……。

 今思い返すとあの時の出会いが偶然じゃない運命のようなものだと僕は勝手に思っている…………。

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