第4話

 始まりは小さな生物だった。

 それまで人は人であったし、そこに区分などさしてなかった。

 だが、その小さな生物は生物から生物へと転々とし――。


 果てには非現実を引き起こす原因となった。

 魚の特徴を持つ人が、獣耳が生えた人が、突如現れた。

 最初は何かの病気だと思われた。


 しかし、その調査が進む前に。

 世界は混沌へ加速する。

 人体実験から生まれたと言われてもおかしくないほど奇怪で、強靭な歯を有し、異常な嗅覚と聴覚を兼ね備えた生物が産声を上げ始めた。


 いつしか人間の方が数が少なくなり始めた頃、ようやくその小さき生物への対抗策がとられた。

 しかしながらそれは時すでに遅く。

 獣じみた新人類は仲間を集め。

 各々で子を成し、彼らはテリトリーを広げることになる。

 【鳥獣人ハーピィ】は木の上から魚や木の実を食すようになり、【鰐獣人レプティ】は川を住処として獲物を引きずり込む。

 【両生獣人エンフィ】は昆虫食を好んで森に隠れ、身体能力が発達し視力が上昇した【乳獣人ビースター】とテリトリーの境界を争った。

 【魚獣人マーメイド】は海を支配し水底に都市を建設した。

 【亀獣人テラピアン】は水があれば生活可能になり、人間の領域を侵犯した。

 【蛇獣人メドゥーサ】は熱帯を好み、砂漠地域にも生息するように。

 以上七種の新人類が世界各地に誕生した。


 だがそれで終わりではない。

 【鳥獣人ハーピィ】と【鰐獣人レプティ】が子を成し、他の種同士で二種不完全体から三体以上の特徴をもつ新種が生まれたのである。

 前者は【竜獣人ドラゴニア】と、後者は【複獣人キマイラ】と名付けられた。

 人類含めこの十種が以降世を支配するようになった。

 だが同じ人類間で戦争が起きていたのだ。

 新人類との間で戦争が起きないことがあり得ようか。


 国境を定めることはもう諦めていた。

 だから彼らは解決策を提示する。


 ――大会をしよう。

 ――格付け戦争としての大会を。


 総当たり戦のこの大会は互いに欲しいものを要求することができる。

 それは対等である必要があり、勝負方式は自由。

 試合会場フィールドは上位種の国内で。

 ルールは単純。

 しかし勝利は簡単ではない。


 五十七回の大会で全て黒星を叩き出した人間は劣等種としてのレッテルを貼られ、今年の大会でもむしり取るものがないために消化試合と思われているほどだ。


 だが、それでも青年は勝ち上がろうとしている。

 第一位の玉座に。

 今年の大会は波乱が巻き起こりそうだ。


 大会名は――――【天上の祭りヘブンズ・フェスタ】。

 

 

 

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