第32話 本で飛ぶ

「大変だ! 追いかけなきゃ」


走って追いかけようとする梨偉人を引き留める。


「いや、無理だろ。何か作戦を考えよう」


「作戦っていったって」


「何かいい作戦ないのか。読んだ本の中に何か役に立つ情報なかったか」


「えっ、そんなの覚えてないよ」


「はっ! なんのために本読んでんだよ」


「本に書いてあるんだから覚える必要ないだろ。必要なら読めばいいんだから」


「でも、今読んでる時間ないよ」


「もう、そんな痴話げんかしてる時間がもったいないよ」


とか揉めていたら、図書館の本が全部窓から飛んで出てきて全部空に浮いてると思ったら、三冊の大きな本になって、三人を乗せて空を飛び出した。


「えっ、なんだこれ?」


「わあっ、空を飛んでる。僕空飛ぶの夢だったんだ」


「私もよ」


二人とも詩人タイプか。でも今は喜んでる場合じゃない。


「よし、これであいつを追いかけよう」


リモコンを適当に押したら、本が猛スピードで動き出した。

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