第16話 伝書本

この世界にも通信手段はある。伝書本っていう名前で、本の形をしてるやつで、これに用件を話しかけると文字が浮き出て、指定のページを開いて相手の住所や名前を言うと、こいつが異空間を飛んで書いた相手に届けてくれる。電話みたいに話すこともできて、発した声が文字になって本に浮き出て、ページがなくなるまで話せる。


でも、スマホはないから梨偉人はスマホを持ってないはずなのになんで出たんだろう?


「どうしたの? 栞が伝書本飛ばしてくるなんてめずらしいね」


「あ、う、うん」


やばい、どう説明するばいいんだ。とりあえず向こうには伝書本が行っていることはわかった。この際だから今まで聞きたかったこと聞いてみよう。


「あ、えーと、たいしたことじゃないんだけど、梨偉人ってなんで前髪伸ばしてるの?」


「えっ、そんなこと? べつに、切らなかったら伸びちゃっただけだよ」


なんだ、そうなのか。あの前髪の中に速読の秘密が隠されてるんじゃないかってふんでたんだけどな。


「そ、そうなんだ。実はそれが速読の秘密かな、なんて思ってたんだよね。あはは」


「そっか。速読ができるようになりたいんだね。明日から図書っ室で一緒に練習しようよ」


「い、いや、大丈夫。また明日」


いつも図書室に詠子がついていってるから、俺がいったらお邪魔虫だし、昼休みまで読書とかマジ無理。はあ、なんで一番嫌いな読書を絶対しなきゃいけない世界に転生しちゃったんだろうな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る