本について 書評 推薦文
カトウ レア
第1話 「砂まみれの名将」加藤弘士 を読んで
90年代、ヤクルトスワローズを応援していた。監督が交代したら、万年Bクラスのチームが3位になり、1位になり、ついには日本一となった。目の前で見た監督の胴上げシーンは脳裏に焼き付き、ファンとして夢のような時間を味わえた。新たに就任した監督は、データー重視のID野球を掲げ、コンバートやトレードなどで選手の新たな魅力を発掘し、野村再生工場とも言われた野村監督だった。
本書「砂まみれの名将 野村克也の1140日」は、監督の67歳の新たな挑戦を描いたものである。ヤクルト時代に、リーグ優勝4回、日本一3回という輝かしい実績を積んできた監督だが、夫人の脱税事件や成績不振により、阪神の監督を追われる。年齢もあり、もうプロの世界での監督の目はないかと思われていたが、盟友のシダックスの志太勤会長から社会人野球チーム、シダックスの監督就任の依頼が舞い込む。本書は監督就任からのシダックスでの3年間の軌跡である。
まず、気になったのは本書の題名にある「砂まみれ」の言葉である。なぜ、砂まみれなのか。それは2002年当時、シダックスの主な練習場が、調布の市営グランドだったからである。野外のグランドで、砂埃にまみれながらの再スタート。しかし監督は「野球は野原でやるから、野球なんだよ」と前向きにつぶやく。そして、水を得た魚のように選手と向き合っていく。モットーは、「人間的成長なくして、技術的進歩なし」である。
連日のミーティングによる指摘、だんだんと監督を信頼し、自分の役割を理解し、成長する選手達。社会人野球という舞台で、1つの組織が都市対抗野球優勝という夢に向かって挑む過程が描かれていく。
今、野村監督は亡くなり、もうシダックスの野球部はないが、監督の教え子達が少年野球からプロ野球の舞台まで、指導者として活躍している。「人を遺すのが仕事だから。」と言っていた野村監督の源流をかいまみれる一冊である。
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