最後の仕上げといきますか(ウィルヘルム視点)
「はい、そこまでだ」
俺はアデライドの腕を掴んだ。アデライドは訳が分からず固まっている。
「ジェフリー、ベルを頼む」
俺はジェフリーにベルを託した。
「アデライド、ベルに毒を盛ったな。知らないとは言わせない」
「え、知らないわ。私は知らないわ。ヒューイ様よ、ヒューイ様がやれって言ったのよ。毒もヒューイ様にもらったのよ。ヒューイ様はどこ?」
アデライドは辺りを見渡し、必死でヒューイ殿を探している。
ヒューイ殿はとっくに移動魔法で別のところに移動済みだ。
アデライドがベルに近づいたのはグリーデン公爵の命令だった。
ベルを懐柔して、俺に近付き毒を盛れと言われたと影が報告してきた。夫人にヒューイ殿とグリーデン公爵を会わせる段取りをしてもらい、ヒューイ殿に囁いてもらった。
「ウィルヘルム王太子を蹴落とし、アデライドを王女にして、私は王配になりたい」と。
そして「公爵の病に効く薬を国から持ってくるので元気になって一緒にこの国を動かしましょう」と。
グリーデン公爵はすぐに乗ってきた。
ヒューイ殿から薬を受け取り飲む。もちろん治す訳がない。一時的に良くなったように見せかける薬だ。
アデライドはヒューイ殿から、一緒にベルに近づき、ベルを亡き者にして、俺が落ち込んだところに入り込み毒を盛ろうと言われ喜んだ。
「私はあの女がずっと邪魔だったのです。うまく毒を飲ませます。あの女は甘いからすぐに騙されるはず。あなたが王配になってくれるならあんな婚約者すぐに捨てますわ」
影から全て報告が来ているのにバカな女だ。そんなに女王になりたいのか? アデライドの頭じゃ国はすぐに他国の属国にされてしまうだろう。
甘くて、すぐに騙されるベルも王妃としては失格だ。
まぁ、元々ベルを王妃にするつもりはない。
グリーデン公爵達が失脚するまで、影に守らせる為に婚約者にした。俺としては良い駒として動いてもらうためにもベルは手元に置いておきたかった。だからベルを騙したんだ。
前の世界でベルが死んだ後、神から聞いたと言ったことは全て嘘だ。
そしてパラレルワールドも嘘だ。
神を脅して巻き戻らせただけだ。
巻き戻る前の記憶があるのは、俺とベルだけじゃない。ジェフリーも記憶があった。
俺は自分が毒を盛られないようにし、ジェフリーは影に徹しベルを守ることにした。
そして俺達はグリーデン公爵と側妃、アデライド、国王に復讐することにした。
ヒューイ殿とセレスは巻き戻る前の世界では泣き寝入りしていたようだが、今の世界では仲間として引っ張り込んだ。
辺境伯やヒューイの侍女の弟、グリーデン公爵夫人も駒として動いてもらうために引っ張りこんだ。
なぜ、ベルを騙したかって? ベルは甘いから、真実を知ったら駒になってくれなさそうだしね。
知らないまま動かすのが良いと思ったんだ。
ジェフリーにはアデライドと婚約してもらい、アデライドからベルを守らせた。嫌そうだったけど王太子命令でやらせた。
巻き戻る前の世界でジェフリーがベルを守れなかったのは俺のせいだ。
俺がジェフリーを影武者にしていたので、ジェフリーは動けなかった。あの時、俺が亡くなる寸前であいつは身動きが取れず、影にベルを守って欲しいと頼んだが間に合わなかった。
アデライドは別にジェフリーが好きな訳じゃなかった。
自分にひれ伏さない男が気に食わなかっただけだ。
しかもジェフリーは俺の側近で俺の影武者だから俺が死んだ後、自分が王女になり、ジェフリーを王配にして仕事をさせれば良いと思ったようだ。
ジェフリーは子供の頃からベルにベタ惚れなのにアデライドになんかなびくわけがない。
ジェフリーにベルからの手紙が届かなかったのは俺が影に止めさせていたから。ベルはノバック公爵と父親だと思っているけど、違うんだ。
2人とも子供思いの良い父親であり、俺を思ってくれている良い家臣だった。
ジェフリーは俺の代わりに仕事が山ほどあって忙しいから、婚約者からの手紙なんて渡してやらなかった。
元気で愛する女と婚約しているジェフリーに小さな嫌がらせのつもりだった。
手紙の内容は知らなかった。俺が手紙を止めなかったら、ジェフリーが手紙を読んでいたら、ベルは殺されなかったかもしれない。
俺はあの世で後から来たジェフリーにそれを話したら散々な目に遭わされた。神をボコボコにした後でジェフリーにボコボコにされた。
俺のせいでベルが死んだって。逆恨みだよな。
でもまぁ、ベルの葬儀のあとブチ切れたジェフリーは離宮に乗り込んで、アデライド、側妃、グリーデン公爵を滅多刺しにして殺害し、ベルの墓の前で自害した。
そこで天に上がり巻き戻せと神に文句を言っている俺と再会したわけ。
巻き戻ってからベルに嘘を教えたのは俺の嫌がらせ。殴られたのを根に持ってたから、あいつが悪者だとベルに吹き込んでやった。
まぁ、本当に好きならあいつが頑張ればいいんだからな。
さて、最後の仕上げといきますか。
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