パーティーは続くよ
ウィル様にくっついて色んな人に婚約者だと紹介してもらう。
「まぁ、可愛い婚約者さんですこと。殿下の愛でいっぱいのドレスよくお似合いですわ」
「ありがとうございます」
感じのいい夫人だ。
「ベル、辺境伯夫人だよ。夫人は母上の姉なんだ。ベルと同じ年の令嬢がいるんだよ。仲良くして欲しい」
これは仲良くなれってことだな。辺境伯令嬢もウィル様の駒なのか?
「そうなのですか。お友達になれたらうれしいですわ」
「お友達になっていただけたら私もうれしいですわ。すぐ連れて参ります」
辺境伯夫人はそう言うと側にいた女性に耳打ちをした。
女性は「失礼いたします」と頭を下げ消えた。
「さすが辺境伯夫人ですね。いい側近をお持ちだ」
いい側近?
ウィル様は口元だけ笑っている。怖いんですけど……。
少し雑談をしていると背の高いごっつい身体の男性と小さい女の子が来た。
「ウィルヘルム殿下、本日は誠におめでとうございます」
「ルーファス殿、ご無沙汰しています。今日は来てくれてありがとう」
「殿下がお呼びであればどこにでも馳せ参じます」
凄い。辺境伯閣下を掌握しているのか。
「こちらは婚約者のベルティーユです。セレスティア嬢とは同じ年なので仲良くしてもらえるとうれしい」
「ベルティーユでございます」
とりあえずカーテシー。今日はとりあえずカーテシーばっかりだ。
「ありがたき幸せ。セレスティア、挨拶をしなさい」
辺境伯様は令嬢のお尻をポンと叩く。
「セレスティアでございます。ベルティーユ様、お会いできてうれしいです」
「セレスティア様、仲良くしていただけるとうれしいです。よろしくお願いします」
私がにっこり笑ったら、セレスティア様も笑い返してくれた。
シルバーのストレートな髪に黒い瞳。かなりの美人だが、笑顔は黒い。セレスティア様はなかなか腹黒そうだ。きっとウィル様の手のモノなのだろう。
私と仲良くというのもただの友達という感じではなく、色々な意味があるのだろうな。
「ルーファス殿、セレスティア嬢を借りてもいいかな?
「もちろんでごさいます」
ウィル様は私とセレスティア様を連れて庭に出た。
ガゼボに座り消音魔法をかける。
「パーティーは疲れるな」
「ほんとに疲れますわ。狐と狸ばかりでぞっとします」
セレスティア様、そんなキャラなの?
「ベル、実は辺境伯家は我が国の暗部なんだ。セレスも5歳だけど下手な大人よりも頼りになるよ。ベルについてもらおうと思ってるんだ」
「そういうことですか」
「うん、私の婚約者は必ず狙われる。セレスがいれば阻止できるだろう。それに2人は本当に仲良くなれそうだしな。護衛であり友であるとうれしい」
ウィル様はクスクス笑っている。
「ベル様とお呼びしてもよろしいですか?」
「ベルでよろしいですわ」
「では、私のこともセレスとお呼び下さいませ」
「ベル、セレスの家はグリーンデン公爵に恨みがあるんだ。ルーファス殿の妹はグリーデン公爵に殺されたも同じなんだ。私も辺境伯家も理由は違えど敵は同じなんだ」
「グリーンデン公爵は色々やらかしているんですね」
「うん。野心家だからね。本当なら娘がいたら王家に嫁がせたかったのだろう。正妃はもちろん、いくら妾達を孕ませても女児は産まれなかった。だから当時の王太子、父上だけどね。その恋人だったミランダ嬢、今の側妃を養女にしたんだ。前の世界ではアデライドを傀儡の女王にして、国を牛耳ったけど失敗した。グリーデン公爵はその器ではなかったんだよ。身の程を知るということは大切だよ」
「思い知らせてやりましょう。ベル、実はグリーデン公爵は私の実の父母の敵なの。実の父はグリーデン公爵にあらぬ罪を着せられて処刑されたわ。その時、母のお腹には私がいたの。母は私を産むとすぐに亡くなった。今の父は母の兄で今の母は亡くなった母の親友だったの。父は妹を溺愛していたのでグリーデン公爵に対する恨みは尋常じゃないわ。私達はグリーデン公爵に復讐しようと思っていたから殿下の話に乗ったの。一緒にグリーデン公爵を破滅させましょう。もちろん側妃と王女にも良い思いはさせないわ」
セレスは不敵に笑う。
それにつられてか殿下も微笑む。
私は前の世界で不当な嫌がらせを受け、殺された。
私を殺した王女に腹が立って仕返ししてやりたいと思っていたけど、殿下やセレスほど強い思いかと言われるとそうではなかった。腹を括ろうと思う。
「ベル、まだまだグリーデン公爵や側妃に恨みがある奴はいるんだ。仲間はおいおい紹介していくよ」
まだいるのか?
それにしてもグリーデン公爵や側妃は恨まれるようなことを余程やったんだな。自業自得というやつだろう。
そろそろホールに戻ろうとウィル様が消音魔法を解いた。
「殿下、ヨーセット王国の第2王子が到着されております」
従者が告げる。
「やっと来たか。ベル、セレス行こう」
ヨーセット王国?
もう、ウィル様の画策が凄すぎて目が回りそうだ。
私は腹黒いふたりに連れられて、ヨーセット王国の第2王子が待つホールに向かった。
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