第14話 ドレスアップしたら、羞恥心に負けました
(ふわぁぁぁーー。噂には聞いていたけど、すごいわ)
貴族の中でも特に地位や名声に優れた者、または国内有数の資産家以外は門前払いされると言うブティック・ヴィテス。
勿論、エルシアが訪れるのは、初めてのことである。
煌めく豪華なシャンデリア、飾られた調度品の数々。
品よく揃えられたそれらは、元婚約者の公爵家でも全てを揃えるのは難しいだろうと思わせるものだった。
「お待ちしておりました、クロード殿下。本日は貸し切りでございますので、ごゆっくりお過ごし下さい」
クロードとは顔なじみであるマダムは当然のように話すが。
(こ、この店が貸し切り!? 一体いくらかかるんだろ……)
一気に心拍数が上がるエルシアである。
「初めてお目にかかります、エルシア様。お越し頂くのは勿論、お呼び出し頂ければ私がご挨拶に伺いますのでどうぞご贔屓に」
「は、はい」
頭を下げたマダムは、エルシアの返事に安心したようにホッと胸を撫で下ろした。
ーー未来の王太子妃に粗相があっては店の存続に関わる。
二人の婚約は極秘だが、ドレスを用意する関係でこのマダムの耳には入っているのだから緊張があったようである。
「では、お気に召す物があればお声がけ下さい」
ドレスコーナーに案内すると、そう言って彼女は席を外す。
クロードは、エルシアが選びやすいようにソッと後ろから見守ることにした。
(どのドレスも、何て素敵なのかしら)
初めて見る豪華なドレスの数々。
光沢のあるサテンのドレスや、ボリュームのある総レースのチュールドレス。
令嬢ならば誰もが一度は夢見る光景がそこには広がっていた。
(でも……わたくしには派手じゃないかしら)
余りに華やかなそれらを着こなす自信がないエルシアは、唯一普段よく着るのと同じ藍色のドレスが目に付き、思わず手に取った。
「それが気になるか?」
「あ。えーーと、はい」
(……言えない。地味めに見えたから手に取ったなんて言えない)
エルシアが自分でドレスを選んだことが嬉しかったクロードは、早速マダムを呼んで試着をすることとなる。
「とてもお似合いですわ! エルシア様。殿下もお喜びになります、呼んで参りましょう」
「絶っっっ対!! やめて下さいっ」
試着室の鏡の前でエルシアは後悔する。
地味めなドレスだなんて思ってごめんなさいーー!!。
色こそ藍色のそのドレスは、胸元を大胆にV字で見せており、背中までしっかりレースで透けさせている。
おまけに腰をリボンでしっかりと絞ったマーメイド形でスタイルをしっかり魅せるドレスだったのだ。
(……こんな格好、恥ずかしいっ)
初めて見る鏡の中の大胆な自分に、羞恥心でいっぱいになるエルシアであった。
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