第39話 不穏な空気
その日の王都はいつもと何かが違っていた。
「なあ何時もより暗くないか?」
「気のせいじゃないか?だって普通に太陽出てるし、霧とか出てる訳でもないから」
「それもそうか」
王都の国民が感じていた違和感はサキやリーブ達プレイヤーも感じていた。しかし気に留める者は少なくその日は過ぎていこうとしていた。
しかしサキは違っていた。いや違う、気に留めるどころか何かがやって来ることを察知していた。
他にもリーブ、カイ、かぐや、サスケや
「ねぇリーブ」
「分かっているよサキ。今日はこの世界における特異点となりうる日になるはずだよ。だから私達は準備を万端にして置かないと」
「大丈夫だよリーブ私は最後まで貴女を守るから」
「私は守らなくていいよ。サキは後悔しないやり方をやれば良いんだよ。だって私たちは生き返れるしね」
「そうだね」
二人がそう話している内に半日が過ぎた。昼を過ぎ太陽が真上に昇って来たその時、その世界でのイレギュラーが現れたのだった。
「来たよリーブ!!」
「分かっているよサキ!あれは魔法の一種だよ!!」
二人が見た先には、太陽に重なるように王都上空に空間の歪みが現れていた。その空間から現れたのはリーブが地竜ティラノサウルスとの戦いにて出会ったトワと呼ばれる謎の美女だった。
「わっちは近衛騎士元帥グリム・フレイヤに用があるでありんす。彼がわっちに付いてくるならこの国に手は出さないでありんす。でも拒否するなら潰すぞ」
彼女が最後に言った言葉には【魔王覇気】と呼ばれるスキルが付与されていたため、一部の強者を除く全ての人達は腰を抜かし倒れてしまった。
「俺に付いて来いと言うのか?笑わせるな!俺は王家に全てを捧げた者だ、それにお前如きに潰される訳がない」
「そうでござんすか………わっちは手加減はしないでありんす」
「
彼女がそう言うと王都全体が暗くなっていた。皆が不思議がり地面に腰を付けながらも空を見上げると、巨大な隕石が王都向かって落ちていた。それらは王都の5つの区画に1つずつ落ちているため、全て合わせると5つもの巨大な隕石が落ちて来た。これには余裕があったグリムも焦っていた。
「どうするサキ!!」
「私は商業区の隕石を壊しに行くから着いてきてリーブ!!」
「分かった!」
二人は商業区向かって走り出した。その頃居住区に居たかぐや率いる“月のカグヤ教”のメンバーは市民の避難誘導をしていた。
「私はあの隕石を破壊するからみんなは市民の避難誘導をお願い」
「何故市民を誘導する必要があるのですか!?まずは自分の安否を気にしてください!それにこの世界の者はAiですよ!?そんな奴ら気にしなくていいですよね!」
「私達には人を救う義務があるのです!それがAiだろうと人間だろうと変わりはありません」
「そうです。貴方はかぐや様の考えを否定するのですか?」
「い、いえ、そう言う訳では」
「ならやってください」
「……分かりました」
こうして“月のカグヤ教”は隕石から市民を守ることに決めた。
そして場面は王都に戻り、グリムとトワは戦闘を始めようとしていた。
「あの隕石はどうにかしなくていいんでござんすか?」
「王都を壊そうとしている物を我が王が許すはずなかろう」
「なら主はわっちの相手をするんでござんすか?」
「ああ」
返事をしたグリムは腰にある聖剣は抜かずに拳を構えた。
「わっち相手に聖剣を使わないんでありんすか?それは舐めすぎでありんすよ」
「別に舐めているつもりはないのだがな、そう言うなら仕方ない……」
そう言ったグリムは腰にある聖剣を抜くと、神聖魔法とは比べ物にならないほどの神々しい光を放った剣身は、膨大な魔力を帯びていた。
「へぇ、それが邪龍を滅した聖剣でござんすか……拍子抜けでありんすな」
そう言ったトワは両手に魔力を溜め、手のひらを合わせた。そうすると両手の間に高濃度の魔力の塊が出来ていき、やがて形が変形していくと、ドス黒い大剣が出来ていた。
「わっちはほぼ全ての魔物を網羅しているでありんすからぬしの装備邪龍シリーズへの特攻を持つ【ドラゴンキラー】の属性を持つ大剣
「やはりお前はそこまでの相手だな」
「はて?わっちがそこまでの相手と断定する要素がどこにありんすか?」
「手合わせすれば直ぐに分かる」
「そうでありんすか……なら手合わせをするでござんす」
そう言ったトワは手に持った偽龍殺之大剣を構えてグリム目掛けて飛んでいった。
「若いな」
グリムは聖剣を軽く構えるとトワからの攻撃を軽く受け止めていた。
「お前の攻撃はスキルとステータスの恩恵のみに頼っている。それだけじゃあ俺には勝てない」
グリムはトワの大剣を軽々しく弾き飛ばすと飛ぶ斬撃を至近距離でトワに撃ち込んだ。飛ぶ斬撃はトワに当たったが、トワへのダメージは全くと言っていいほどなかった。
「少し痛かったでござんす」
彼女へのダメージが無かったのは、圧倒的な基本ステータスの高さと彼女が持つ物理耐性LvMaxというスキルが原因であり、彼女のステータスと物理耐性LvMaxを超えるダメージ量で攻撃を与えなければトワにはダメージが入らないのだった。
「流石にステータスは高いか……だがまあそれだけだ」
そう言ったグリムは自分の魔力を聖剣に込めると、聖剣から神々しい光と膨大な魔力が消えたように感じられた。しかし消えたのではなく聖剣の全てをグリムが制御したため聖剣から漏れ出る魔力が全て聖剣の内側へと込められた。それにより切れ味などの聖剣の能力が格段と上がっていた。
「その聖剣は少々危なそうでござんすね」
聖剣から魔力が消えたように他の人には感じていたがトワは違っていた。
トワは全ての魔法を極めた者にしかなれない超級職業である【魔導王】に就いており、完全に隠れた魔力だろうと感じることは彼女にとって簡単であった。そのため聖剣の危険度が増したことを感じ取れていた。
「今度はこちらから行かせてもらうぞ」
グリムは一瞬魔力を昂ぶらせるとトワの目の前へと移動し切れ味の上がった聖剣をトワの脳天目掛けて振り下ろした。
「っ!!今のは危なかったでござんす」
そう言ったトワの頭上には空間の歪みが産み出された。グリムによる聖剣の斬撃はそこへ吸い込まれたため、トワへのダメージは一切なかった。
「実力者ってのはな攻撃は一撃で済ませないんだよ」
グリムの足には神々しい光を持つ闘気が纏われていて、それの足でトワの顔を蹴り飛ばした。
「っ!?」
トワは蹴りをモロに顔に受けて数百メートル先まで吹き飛んでいった。
「乙女の顔を蹴り飛ばすなんて酷い人でありんすね」
「乙女か……俺の蹴りを喰らってもピンピンしているお前みたいな奴は乙女とは言わん」
「そろそろわっちも切れそうでござんす。わっちの本気を見せて上げるでござんす。"天変地異"」
彼女は一度偽龍殺之大剣を消すと両手に魔力を溜め、それを上空へと向けると魔力が一気に放出された。数秒の時間が過ぎると空からは大量の雨と雷が王都に降り注ぎ、地面からは溶岩が湧き出て、すごい揺れの地震が起こり、巨大な竜巻が五つ程発生していた。
「これはまさに天変地異だな」
「そんなに冷静でいて大丈夫でござんすか?」
「あれを見れば分かる」
二人の視線の先にあったのはいつの間にか破壊されてていた隕石の破片とともにいるマケトニア王国"国王"グラン・セイル・マケトニアがいた。グラン国王は右腕にサキを遥かに上回る闘気を纏い上空へ右ストレートを放つとマケトニア王国から暗雲が消えていた。
「あれがマケトニア至上2番目の実力を持つグラン王の実力だ」
「へぇー、少し想定より実力が上でござんすが、まあ想定内でありんす」
空からの災害が消えたと言っても陸で起こっている災害の湧き出る溶岩、激しい揺れの地震、そして5つの巨大な竜巻は残っていた。
「この国はもうどちらにしろ終わりでござんす」
「なんだと?」
「召喚魔法【古代降誕】」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここからはあとがきです。
応援や評価をして頂けると創作意欲に繋がりますので時間があればお願いします。
フォローや感想もして頂けると嬉しいです
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます