第17話 予選4

「予選第五試合は山岳だぁぁぁ!スタート地点はランダムです。スタートまで5!4!3!2!1!試合開始だぁぁぁぁ!」




 私の名前は東雲しののめ輝夜かぐや

 宗教団体『月のカグヤ教』の教祖かぐやと言う名前でやらせていただいてます。


 彼女は黒髪で身長が140cm程の華奢な体型の女性だ。服装は着物を身に纏い鉄扇を腰に二本挿している。月のカグヤ教は世界四大宗教に数えられ、日本にあった仏教勢力の殆どを月のカグヤ教が吸収したため、日本には月のカグヤ教以外の宗教が存在しなくなった。

 ちなみに仏教徒の大多数が月のカグヤ教に改宗した現在、仏教徒よりもキリスト教徒やイスラム教徒の人数の方が多い。




 この試合はカオスであった。


 まず月のカグヤ教の信者たちが他のプレイヤー達を相討ち覚悟で特攻してキルをしていき、そして生き残った信者たちがかぐやにキルをしてもらうことで、かぐやは戦わずして、予選を勝ち抜けした。


「おぉぉぉっと!?この試合はなにか組織的な行動に思えますね!」


 私はこのゲーム内で月のカグヤ教教祖として、月のカグヤ教を世界に布教するためにもこの大会で優勝しなくては!!





「予選最終試合は、氷山だぁぁぁぁ!スタート地点はランダムです。スタートまで5!4!3!2!1!試合開始だぁぁぁぁ!」




 この試合が予選の中で一番見所がある戦いかもしれない。


「よぉ、ラファエルさんよぉ!」


「お前もこのグループなのかサタンよ」


 この二人は正真正銘のトッププレイヤーであり、NewLifeOnlineプレイヤーでまだ三人しかいない上級職の使い手である。(そのうちの一人はサキである)ラファエルは司祭の上級職の大司教、サタンは拳士の上級職である狂拳士である。

 二人はこのゲームの元となったゲームNewWorldOnlineの最後のイベントにて、優勝を争ったライバルであった。

 しかし優勝したのはその大会で頭角を現した咲良改めリーブが優勝したため、二人の勝敗はNewLifeOnlineに持ち越しとなったのだった。


「そろそろ始めるか!」


「サタンとやるには少し早い気もするが仕方ないか」


 友達と話すような空気から一転、二人の間には殺伐とした空気になった。

 先に仕掛けたのはラファエルだ。


光之槍ライトアロー


 ラファエルは右手をサタンに向けると、手のひらから光が溢れ、その光が槍状となり、サタンへと飛んでいった。


「俺も行くかぁ!アーツ拳覇」


  サタンは腕に赤いオーラを纏った。ラファエルが放った光之槍に向かって拳を、光の槍は消えていった。


「小手調べはここまでにしようぜラファエル!」


「そうか……まぁいい始めようか、【精霊武装】」


 ラファエルの周りに光属性の精霊が集まってきた。その精霊はラファエルの着ていた祭服の上からまとわりつく様にくっ付くと、祭服と同じ模様に変化した精霊がラファエルに装備された。


「精霊魔法か、好きだねぇ精霊魔法」


「文句あるのか?」


「いいや、好きなものを使い続けるのはいいこった。俺もいかせてもらうぜ!【狂化】」


 サタンの身体の周りは赤黒いオーラに覆われ、瞳は赤く染っていた。

 通常、狂化を使った者の瞳からは殺意のみを感じさせるだけなのだが、彼の瞳からは生涯のライバルを前にしたワクワク感が滲み出ていた。


「いくぜ!」


 サタンは地面を蹴り、ラファエルへと向かって跳躍した。


「来い……」


 ラファエルは魔法を使う構えをした。

 サタンは拳を振り下ろした。ラファエルはその攻撃の力を外に流した。


光之爆ライトボム


 攻撃を流されて隙の産まれた脇腹へと光属性の魔力を溜め、爆発させた。

 爆発によってサタンは吹き飛んだが、すぐのところで体勢を立て直してラファエルの方へも身体を向けた。


「あぶねぇな」


「相変わらず単純だな、サタン」


「なにを!」


 ラファエルの言葉の通り単純なサタンは、挑発に乗り、ラファエルへと向かって跳んでいった。


「だからそういう所だ」


 ラファエルは挑発に乗ったサタンを見て溜息をつきながら、冷静に反応して


「精霊魔法:暴雷神之一撃トールハンマー


 雷属性の精霊達がラファエルの号令により集まり、雷雲を創り出した。その雷雲はゴロゴロと音を鳴らした。その音は子供が聴いたら忽ち泣き出してしまう程に威圧感があった。


「受けて立ってやるよ!アーツ憤怒」


 アーツ憤怒はクエスト【怒りの悪魔】をクリアした者に送られる称号【憤怒】をゲットした者が使えるアーツである


「大罪アーツか、このゲームにもあったのか……だがお前に俺を倒すことはできない」


 サタンは右腕に憤怒の力を集め、振りかぶった。

 それに対してラファエルは頭上に広がる雷雲から雷を自分の持つ武器に落とした。雷を受け止めたその武器はまるで雷神トールの持つ武器として有名なミョルニルのようだ。


「これで終わりだぁ」


「俺の勝ちだ」


 サタンの拳とラファエルの雷を纏うハンマーがぶつかろうとした瞬間、「試合終了ぉぉぉぉ!」とシュカイの声が聞こえたと思ったら、二人の攻撃は交わることなく飛散した。


「終わりか。勝敗は本選に持ち越しだな」


 ラファエルは冷静に言っていたが、短期で単純なサタンは


「納得できねぇぇぇぇぇぇえ!」


と沸いている会場の誰よりも大きな声で叫んだ。


「やはりお前は変わらず、短気で単純だな」


「なんだとぉぉ!」


「その怒りは本選でぶつればいい」


「そうか、それもそうだな!」


 長い間サタンと戦ってきたラファエルはサタンのことを理解している。そのため五月蝿く騒いでいたサタンをすぐ止めることができた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ここからはあとがきです。


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