第7話 クエスト
――ログイン――
おー!1日しか経ってないのに久しぶりな気持ちだなぁ。やりたいことが特にある訳でもないし、ミスズさんにでも会いに行こうかな。
「すいません、誰か私のお姉ちゃんを助けてくれませんか」
「おい!ガキが邪魔なんだよ」
「うわっ」
「お、俺のせいじゃねぇからな!」
まだ小学生ほどにしか見えない少女が、ギルドで冒険者たちに声を掛けていたが、とある冒険者に声を掛けた時に迷惑がられて転んでしまった。
流石に少女を転ばせたのはばつが悪いと思ったのか、冒険者は急ぎばやにギルドを後にした。
「大丈夫?【ヒール】」
「あっ、ありがとうございますお姉さん」
正面から見ても可愛らしい子だなぁ。でも成長したら美人さんになりそうな顔立ちかな。
お姉ちゃんを助けてって言ってたから助けてあげたいけど……私に出来ることだといいけど。
「さっきお姉ちゃんを助けてって言ってだけどなにかあったの?」
「お姉ちゃんがね、ケガしちゃったの」
「どうしてケガしたの?」
「私たちにはお母さんもお父さんもいないからお姉ちゃんが働いてくれるの、でも働いているところでは治せないって言われたらしいの」
働いている所では治せない?それは労災が降りないとか、そういう意味なのかな?それならこの世界は世知辛いね。でも私に出来そうなことで良かったよ。
「私聖女だから連れてってくれないかな?治せるかもしれないから」
「うん」
私が少女に連れられて着いた場所は、かなり大きめの建物だった。両親がいないとは思えないほど立派だったからこの少女の姉はきっと高給取りな職業なのだろう。
「お姉ちゃんただいま」
「お邪魔します」
「こっちなの」
「これは」
「お姉ちゃんはこの街の兵士で大隊長をやっているらしいの。でも、あのモンスターによってこの街の兵士の半分ほどが亡くなって、4分の1は重症を負ったらしいの。それでも抵抗して撃退には成功したってお姉ちゃんが言っていたの。でもお姉ちゃんはその時のケガが災いして寝込んでしまったの。だから!お姉ちゃんを治してあげて欲しいの!!それと出来れば頼光を倒して欲しいの!!」
「(頼光?)わかったよ【エクストラヒール】」
「うっ、ここは?」
「お姉ちゃーん」
目を覚ました姉を見て安心したのか、少女はワンワンと涙を流していた。その姿を見てサキは姉妹愛だねと感慨深くなっていた。
「どうしたの?」
「お姉ちゃんが帰ってきてから一度も起きないからだよ」
「あ、そっか私あの酒呑童子【頼光】にやられたのか」
妹ちゃんも頼光って言っていたけど、誰のことを言ってるんだろう?あのモンスターの名前なのかな?
「その頼光って誰なんですか?」
「あのあなたは?」
「そのお姉さんは、お姉ちゃんを助けてくれた人だよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「別に構いませんよ」
サキに微笑みかけられた少女の姉は頬を赤く染めて、照れていた。きっとサキには年上キラー(女性限定)を持っているのだろう。
「///」
「どうしたんですか?」
「あ、いえなんでもないです!ゴッホン、頼光のことですね。頼光とはここら辺を住みかにする鬼の最上位種、酒呑童子のUMの名前です」
彼女は照れたのを誤魔化すように咳払いをした後に頼光について説明を始めた。
「そうなんですね。……でしたら私が倒しましょうか?」
「無理ですよ!これでも私聖騎士Lv89ですよ。そんな私より強い人はこの街に居ないと自負しております!それに無関係の貴女に責任を押し付けたくはありません!!」
「そうなんですね。でもほっとけないじゃないですか。それにこれは街のためとかではなく貴女の妹さんのためです」
「でもあなたのレベルそこまで高くないでしょ」
「はい、まだ聖女Lv8とホワイトラビットLv9の従魔だけです」
「そんなんじゃあ頼光は倒せませんよ」
嫌味を言っているようにも聞こえるが、これはサキのことを思ってのことだろう。だが彼女の優しさは妹の気持ちを踏み躙ることなる。
「でも、それじゃあ妹さんの気持ちはどうなるんですか!」
「それは、私が弱かったからこうなったんです人に頼むなんてできません」
「じゃあ、あなたが頼光を倒しに行くときについて行きます。それならいいですよね」
「……それなら別にいいですよ」
「じゃあついていきますね」
エクストラクエスト発生
難易度7
クリア条件
酒呑童子UM 個体名【頼光】の討伐
失敗条件
討伐の失敗
リリルカ・ラーレットの死亡
成功報酬
???
これクエストなんだ、報酬が???ってなんだ?まあ、頼光を倒してクエストクリアすれば分かるから気にしなくてもいいかな。
「じゃあ、私は明後日の朝に北門にいますから。もしあなたの気が変わっても、私は自分一人で行きますので」
「分かりました。一応自己紹介しておくと私の名前はサキです」
「私はリリルカ・ラーレットです。明後日は死なないでくださいね」
「うん、大丈夫だよ。私は強いからね」
「それなら安心ですね」
「それじゃあ三日後に行こうね」
「ええ、三日後の朝にまた」
サキはリリルカとの心の距離が少し縮まったような気がしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます